2006年に作曲、08年に一度出版された作品だが、ラドウィッグ・マスターズの新しいカタログに再登場したため、あらためて新譜としてご紹介する次第。

　「四重奏」の複数形を意味するタイトルが示唆しているように、作品中に14種類のさまざまな四重奏――ピッコロとフルート、フルートとクラリネット、オーボエとバスーン、クラリネット、サクソフォーン、トランペット、ホルン、ユーフォニアムとテューバ、打楽器など――が登場し、それらが組み合わされるという、ユニークなアイディアで構成された作品。また曲全体は切れ目なく連続する４つの場面――イントロダクションとヴァリエーション、インターリュード、トランジション、それに“ダンツァ”――から成り立っており、タイトルはその点も表しているようだ。ラグタイムやラテン・ジャズ、クレツマー（ユダヤの民俗音楽）、映画音楽風のバラードなど、大衆音楽の多様なスタイルを取り入れていることも注目すべき特徴と言えよう。最後はこれらのスタイルが混然一体となり、熱狂的な終結を迎える。

　吹奏楽のすべての楽器に光を当て、それらのアンサンブルの可能性を追求し、その上エンターテイメントとしても高度な洗練を目指した意欲作。大学以上のレベルのバンドのためのすぐれたコンサート・ピースとしておすすめしたい。
(解説: 後藤 洋)




Grade:5

Performance time: 8:16

Series:New Issues, Symphonic Band CICHY, RogerQuartets: Score & PartsMasters Music Publications