中級バンドのコンクール／コンサート向けレパートリーとしておすすめの１曲。

　タイトルの「アルゴナウタイ」とはギリシャ神話の長編叙事詩に登場する英雄たちの総称で、彼らは王子イアーソーンに率いられ、「アルゴー（快速）」という名の巨大な船で、イアーソーンが王位に就くために必要とされた黄金の羊の毛皮を探して冒険を重ねる。オルフェウス、ヘラクレス、テーセウスなど、名高い勇者たちもその乗組員。ホメロスの『オデュッセイア』をはじめとして、アルゴナウタイについて言及した古今の物語も数多い。

　この作品はイリノイ州にあるアルゴー・コミュニティ・ハイスクール・バンドの委嘱によって作曲されたが、シェルドンはその校名からギリシャ神話に登場する船の名を連想し、王子と英雄たちの冒険と、黄金の羊の毛皮を得ての栄光に満ちた帰還を描く作品の創作を思い立ったようである。

　曲は金管のシグナルと鋭く打ち込むような太鼓の連打に始まり、カデンツァ風のフルート・ソロを経て、緩やかな波の上を航行する船の偉容を連想させる抒情的なアンダンテ、過酷な冒険を象徴する激しいプレスト、クライマックスの後のアンダンテの再現、そして凱歌のような堂々としたコーダ、と続く。限られた時間を密度高く構成した、映画音楽を思わせる非常にドラマティックな作品。

　木管にはあまり負担がかからないように書かれているが、フルートにソロがあり、またバス・クラリネットはバスーンとともに広い音域の分散和音を受け持つことが多い。アルト・サクソフォーンの音域が全体に低く、これはアメリカのスクール・バンド向けの作品の特徴。トランペットは独立して動く場面が多いので、ある程度パワーが必要だろう。打楽器（大活躍！）は７人要求されている。バンド全体で35人程度から演奏可能。

(解説: 後藤洋) SHELDON, RobertTriumph of the Argonauts: Score & PartsAlfred Publishing Co., Inc.