40 年近くにわたってスクール・バンドのための良質な作品を書き続けているアメリカの作曲家、スウェアリンジェンの最新作。2014 年の冬にオハイオ州立大学が主催する中学校の選抜バンド・フェスティバルのために作曲された。同大学の校歌“カーメン・オハイオ Carmen Ohio” の旋律が作品のモティーフとなっており、作曲者は、人々の（とりわけ卒業生の）心に誇りや、先生や友人たちの思い出や、それらを含む学生時代の記憶を呼び起こす校歌の旋律を通じ、時の移り変わりを超えて、幅広い世代の人々が学びの記憶を共有するべく再び集う、というイメージがこの曲の根底にある、と述べている。

　無理のない技術で豊かなサウンドと高い演奏効果を生み出す、という点においてスウェアリンジェンの手腕は他の追随を許さないが、この作品も同様。ティンパニのロールに導かれる堂々とした序奏〜活気に溢れた、しかし品格あるアレグロ〜優美な、そしてドラマティックに発展してゆく中間部〜アレグロの回帰と祝祭的なコーダ、という構成は型通りに見えるものの、最後のアレグロは単純な再現ではなく、中間部で提示された、校歌の旋律に由来すると思われる主題が発展して大きな高揚をもたらす。シンプルながら非常に綿密な構成だ。

　クラリネット、アルト・サクソフォーン、トランペット、トロンボーンが２パートずつで、他は各楽器１パート。ただ、クラリネットとトランペットの１番にはdivisiの部分がある。打楽器は楽譜どおりに演奏すると７名必要だが、バンド全体では25 名程度で無理のない演奏が可能だ。短いトランペットのソロがあるものの、すべての楽器の技術的な負担はきわめて軽い。このグレードとしてはかなりやさしい方だろう。

(解説: 後藤洋) SWEARINGEN, JamesOf Time And Change: Score & PartsC. L. Barnhouse Co.