日本ではまだ無名に近いにアメリカの作曲家スタンドリッジは、1976年アーカンソー生まれ。現在は公立の中学・高等学校で吹奏楽を教え、マーチング・バンドのディレクターとしても活動している。

　教育現場における豊富な経験を生かし、スタンドリッジの作品には初級者でも無理なく取り組むことのできるものが多いが、この《小組曲》もやさしく教育的効果の高い秀作。４つの楽章はいずれも古典的な形式とスタイルで書かれ、以下に示したようにそれぞれに拍子も、テンポも異なる。調性も３つの種類があり（第１楽章と第３楽章が同じ）、生徒たちが曲への取り組みを通じて、音楽をさまざまな方向から学ぶことができるしくみだ。


I. エア Ayre：変ホ長調 4/4拍子 ４分音符＝120

II. ジーグ Gigue：ハ短調 6/8拍子 付点４分音符＝100

III. バラッド Ballad：変ホ長調 3/4拍子 ４分音符＝94

IV. マーチ March：変ロ長調 2/2拍子 ２分音符＝108


　イギリスの歌曲の形式であるエアやバラッド、同じくイギリスの舞曲であるジーグの形式を採用していることから、スタンドリッジがこの作品を、文化や歴史と音楽形式との関わりについての教育ツールとしても見なしていることがわかる。また、アーティキュレーションやダイナミックスの指示も非常に綿密で、注意深く取り組むことによって音楽表現のポイントもしっかり学ぶことができるだろう。

　アメリカの作品には珍しく、クラリネットを中心とした上品なサウンドが組立てられている点も注目に値する。バンド全体で20人程度で無理のない演奏が可能。

(解説: 後藤洋) STANDRIDGE, Randall D.Little Suite for Band: Score & PartsThe FJH Music Company INC.