打楽器アンサンブルとバンドのための作品。作曲者によれば「ブラック・レインボー」とは、月の表面に反射する光によって夜間にできる虹で、光が弱いために色がほとんどない状態に見えることから、その名で呼ばれるとのこと。この作品では、本来の虹が見せる（しかし月の虹では目視することのできない）７つの色のスペクトラムを音で表すべく、曲全体を「赤」「オレンジ」「黄」「緑」「青」「藍（インディゴ）」「紫（ヴァイオレット）」と名付けた７つの部分から構成し、たとえば、赤：行動力、エネルギー、情熱、オレンジ：創造性、茶目っ気、安定、のように、それぞれの部分でそれぞれの色が象徴するコンセプトを表現することを試みている。

　６人の打楽器奏者をソリストとした協奏曲と言うべき内容で、同じ出版社から作品を出しているデイヴィッド・ギリンガムの音楽に近いスタイル。打楽器パートはレベルの高い高校生か大学生向きであり、使用する楽器の種類も多い（ただし、特殊な楽器は要求されておらず、１台のマリンバを数人でシェアするなど、最小限のセットアップで演奏可能なように配慮されている）。作曲者ドートリーは打楽器奏者でもあるため、楽器の効果的な生かし方は実に見事なもの。持ち替えや楽器間の移動、左右の手順なども非常によく考えられており、実際に聴いた印象よりも演奏は容易かもしれない。バンドの楽器も、それぞれの特性や音色を考慮し、「色」をテーマにしたこの作品全体をヴィヴィッドに彩るべく、巧妙に使われている。
　打楽器セクションが意欲的なバンドはぜひ注目しておきたい１曲。編成はほぼ標準的で、オーボエとバスーンはオプションとなっている。(解説: 後藤洋)

Level: 4 ensemble / 5 solo
Duration: 8:30 DAUGHTREY, NathanBlack Rainbow: 6 Solo Percussion with Band: Full Score & PartsC-Alan Publicatons