2015年４月10日にワシントンD. C. で開催された高校バンドのコンテスト「ザ・プレジデンツ・カップ」の開会コンサートで、合衆国陸軍バンドが演奏するために委嘱された作品。ホワイト・ハウスのすぐ側で開催されるコンサートにふさわしい内容にするべく、スパークはワシントンD. C. にある数々の記念碑や彫像の中から３つを選び、それぞれの印象を音楽化した。３つの場面は切れ目なしにつなげられている。



1. リンカーン記念堂（ The Lincoln Memorial）　内部に第16代大統領エイブラハム・リンカーンの座像を設置した、神殿を思わせるドーリア様式の建造物。雄大な建造物の「静」と、毎年300 万人と言われる訪問者の「動」を対比させた、とスパーク自身が述べているように、音楽は壮麗な導入部に活気に溢れた（しかし繊細な）アジタートの場面が続き、やがて静まっていく。



2. マーティン・ルーサー・キング・ジュニア記念碑（ The Martin Luther King, Jr. Memorial）1963年８月28日、リンカーン記念堂周辺で行われたのが、アメリカ史上最も大規模な政治集会とされる「ワシントン大行進」。アフリカ系市民の公民権獲得を訴えたこの集会を主導したマーティン・ルーサー・キング牧師の有名な演説“ I have a dream” も、記念堂の前で行われた。2011年に建立されたそのキング牧師の記念碑にインスピレーションを得たこの部分では、フルートと鍵盤打楽器群による幻想的なパッセージと、ソプラノ・サクソォーンが中心となる静かなコラール風の楽想が対置され、やがてコラールは記念碑の力強さを表すかのように分厚い響きの荘重な音楽に発展する。



3. デューク・エリントン“アンコール”（ Duke Elli ngt on“ Encor e”）ワシントン生まれのジャズの巨人、デューク・エリントンの音楽人生が開花したと言われるのが、この街の北側郊外にあるハワード・シアター。永く閉鎖されていたこの劇場は2012年に再び開館し、その際“アンコール”と題されたエリントンの彫像がその屋外に設置された。曲は一転して洒脱なスウィングとなるが、エリントンの曲の引用などはなく、音楽はすべてスパークのオリジナル。テンポは一定ながら調性やテクスチュアはめまぐるしく変化する。同じ作曲家の《ウィークエンド・イン・ニューヨーク》に関心のある人にはぜひ注目していただきたい。



陸軍バンドのために書かれただけあって、技術的にも音楽的にも非常にレベルが高く、編成も大きいが、内容もきわめて充実した秀作。フルートとサクソフォーン・セクションが充実した、意欲のある大学以上のバンドにおすすめ。(解説: 後藤洋)



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出版元はAnglo Music Press SPARKE, PhilipThree Washington Statues: Score & PartsHal Leonard Corporation