特定のストーリーや説話を題材とした音楽を得意とするベルギーの作曲家、ベルト・アッペルモント（1973 - ）の新作は、ジュゼッペ・トルナトーレが監督したイタリア映画『ニュー・シネマ・パラダイス』（1988 年公開）の中のエピソードに基づくもの。この映画の中で、映画に魅せられた少年トトは村の唯一の娯楽施設である小さな映画館の映写技師アルフレードと親しくなり、映写機の操作を教わるようになる。ある日映写室が火事になり、やけどで視力を失ったアルフレードは、トトに以下のような兵士と王女の物語を語る。
　昔、王様が晩餐会を開き、警備に立ったひとりの兵士は王女様をひと目見て恋に落ちてしまう。しかし、貧しい兵士と国王の娘の恋が叶うわけがない。それでも思いは募り、ある日ついに兵士は王女に告白する。驚き、しかし兵士の思いに心を動かされた王女は答える。もしもあなたが100日の間、昼も夜も私の部屋のバルコニーの下でずっと待っていてくれたら、私はあなたのものになります、と。??兵士はすぐにバルコニーの下へ飛んで行き、雨の日も、風の日も、雪の日も、ずっとそこで待ち続けた。90日が経ち、兵士は痩せこけて真っ白になっていた。滴り落ちる涙を抑える力も、眠る気力すら残っていなかった。王女はそんな彼の様子をずっと見守っていた。そして99日目の夜、兵士は姿を消す。
　以上のエピソードが何を意味しているのか、映画の中でははっきりと述べられていない。そのため今日でもその解釈について議論が続いているようだ。
　アッペルモントはこの物語を基に、切れ目なしに演奏される以下の３つの場面からなる作品を構成した。

1．王女：優美なシチリア舞曲。
2．100日の昼と夜：突然急速なテンポに変わり、待ち続ける兵士の様子が、低音と打楽器のオスティナートが支えるドラマティックな音楽で描写される。
3．旅立ち：シチリア舞曲が短調で再現。兵士が立ち去った後の悲しみが表現される。

　技術的には平易で、限定されたパターンで音楽が構成されているため、内容も理解しやすい。初級のメンバーを含めてコンクールやコンサートで演奏し、十分な演奏効果を上げることができる。20 名程度から無理のない演奏が可能だろう。(解説: 後藤洋)

2016年バンド100選推薦曲
Grade 2
Time 4:53
編成は以下の通り。
FULL SCORE x 1

FLUTE 1 x 2

FLUTE 2 x 2

OBOE x 2

BASSOON x 2

BB CLARINET 1 x 5

BB CLARINET 2 x 5

BB BASS CLARINET x 1

EB ALTO SAX 1 x 2

EB ALTO SAX 2 x 2

BB TENOR SAX x 2

EB BARITONE SAX x 2

BB TRUMPET / CORNET 1 x 3

BB TRUMPET / CORNET 2 x 3

F HORN x 4

TROMBONE 1 x 2

TROMBONE 2 x 2

EUPHONIUM/BARITONE x 2

BB EUPHONIUM TC x 2

TUBA x 4

MALLET PERCUSSION x 1

PERCUSSION 1 x 2

PERCUSSION 2 x 2

TIMPANI x 1 APPERMONT, BertSoldier & The Princess, The: Score & PartsHal Leonard Corporation