マルチフォニック・フォー・サクソフォン

マルチフォニック(重音)とは、本来１つの音しか発音しないシングル・ノート楽器で、同時に複数の音を出すテクニックのことです。

サクソフォン・プレイヤーがハーモニーを表現したい場合、通常はそのハーモニーを構成する音を１音ずつ演奏するしかありません。しかし、マルチフォニックをマスターすることで、ハーモニー表現の幅は格段に広がります。特に、ジャズであれクラシックであれコンテンポラリーな音楽をサクソフォンで演奏するときには強力な武器となるでしょう。

本書は、膨大な研究の結果導き出された178のマルチフォニック・フィンガリングを掲載しています。また、それらはフィンガリング・チャートを見ながらの練習でも比較的サウンドを実現しやすいものを集めたものです。従って、本書に掲載されているもの以外にもマルチフォニックはありますので、本書をマスターしながらより高度なマルチフォニックの探求に進めます。

さらに、マルチフォニックを練習する過程ではアンブシュアやエアのコントロールなども鍛えられるため、ノーマル・サウンドにおける音質の向上も期待できます。

本書をマスターするためには、基本的なサクソフォンの奏法(アンブシュア、エアのコントロール、フィンガリング、倍音のコントロールなど)をマスターしている必要があります。それらに不安がある場合は、無理にマルチフォニックを出そうとすると奏法のバランスを崩す(最悪の場合は筋肉を痛める)可能性があるので注意が必要です。

本書にとりかかる事前の準備として、正確な奏法と基礎知識を学ぶための　サクソフォン・ワークブック(基本的な奏法やピッチの正確さを鍛える)、サウンド・メイクのための　トップ・トーン・フォー・サクソフォン(倍音やハイノートを鍛える、さらにはそれらのトレーニングを通してアンブシュア、エアの使い方、耳などを鍛える)をマスターしておくことを強くお勧めします。