「ちょっとおどけたワルツ」は、もともとイベールのフルート協奏曲演奏後におけるアンコールピースとして2015年に作曲した曲である。そのため初演時の編成は、フルートソロおよびイベールと同じサイズのオーケストラとなっており、難易度も協奏曲に匹敵するレベルとして書かれている。

初演は2015年12月19日に杉並公会堂にて、上野由恵氏のフルートソロ、Iris Philharmonic Orchestraの演奏で、作曲者自身の指揮により行われた。このような作曲経緯から、曲はイベールと同時代に生きていた架空のフランス人作曲家がワルツを書いたらこのような感じになるのではという想像で書かれている。「ちょっとおどけた」というのはフランス風エスプリの模倣で、ふわふわと安定しない調性や、気分屋のように様々な表情に変わる旋律を表す言葉として名付けた。また、フランス風を意識しているが作曲者は紛れもない日本人であり、どう足掻いてもネイティブのように書けないところもまた、「ちょっとおどけた」という単語でごまかしている。構成は分かりやすい三部形式で、中間部はトリオの位置づけとなっており、曲の最後にテンポを上げたコーダを伴っている。

2015年の初演後、2018年にソロ楽器を用いない純粋なオーケストラ版に編曲し、以降作曲者の指揮にてたびたび演奏を行っている。本編成のフルートとピアノ版は、菅野力デビュー10周年記念リサイタルツアー東京公演にて演奏するための作品として、菅野力氏の委嘱により2024年に編曲を行ったものである。(中島章博)

Fl./Pf.