★曲集『ディヴィジョン・フルート』について★

　ディヴィジョンとは、多くの回数繰り返し演奏される低音パターンに乗せて、即興的に演奏された一種の変奏曲で、主題としては、よく知られた歌謡や楽曲の旋律が用いられました。イギリスでは17世紀にヴァイオリンの名手たちがよく演奏して人気を博しました。1686年にイギリスの出版業者Playfordが出版した『ディヴィジョン・ヴァイオリン』は、名人のたちの演奏に刺激された音楽ファンの「自分でも演奏してみたい」という需要に応えるものだったのでしょう。

　やがて紳士の間でリコーダーが流行するなか、出版業者Walshは1700年代初頭に『ディヴィジョン・フルート』を発刊しました。これは、『ディヴィジョン・ヴァイオリン』から多くの曲を取り入れ、別の曲も加えて編まれたもので、有名な「グリーンスリーブズ」や「イタリアン・グラウンド」などを含む、リコーダーファンの間では有名な曲集となっています。


★「グラウンド上のディヴィジョン（フィンガー作）」について★

　さすがは一流作曲家の作で、小粒ながらすばらしい出来栄えの作品です。

　シンプルなテーマは、提示のときだけ２度繰り返す指定があり、以後は繰り返さずストレートに進んでいきます。「変奏の最後に次の変奏の方針を予告する」というフィンガーの好んだ作りかたになっていますので、繰り返すことが想定されていないのは明らかです。

　もっとも、どうしても繰り返しのある演奏をしたければ、各変奏の最後の小節を「２番括弧」として、いわば「１番括弧バージョン」を工夫すればいいでしょう。いとも簡単なことではあります。