信長貴富：合唱のための６つのソング「ワクワク」

作曲:信長貴富
作詩:谷川俊太郎
A4判／60頁
グレード:中級
演奏時間=約24分10秒
ISBN 978-4-7609-1362-6

《歌おうNIPPONプロジェクト》のために書き下ろされた「ワクワク」を基に作られた合唱組曲。
「ワクワク」を始め、どの曲もポップスを意識したスタイルで書かれていて、平易ながら心に届くメロディは、時にはシニカルに、また時にはコミカルに、聞く人それぞれの感覚にすっと入り込んでくる。最初に序として「ワクワク」のショートバージョンが歌われる。

＜まえがき＞
　東日本大震災のあと、音楽に携わる人々の間で復興支援につながるいろいろなアクションが起こりました。カワイ出版が主催する“「歌おうNIPPON」プロジェクト”もそのひとつで、表題曲である「ワクワク」はこのプロジェクトのために2011 年の夏に作曲したピースでした。詩は1971 年出版の『うつむく青年』（サンリオ刊）に収められているものであり、震災とは関わりがない内容なのですが、震災直後当時の“すべて自粛”のようなムードから脱したいという気持ちがあり、あっけらかんとしたこの詩を選んで作曲したのでした。
　さて、その後思いがけず三多摩青年合唱団から「ワクワク」を含んでワンステージ作りたいというご相談をいただき、2014 年に本書の形になりました。曲集を作るにあたっては、ポップスを意識したスタイルでまとめることを考えました。谷川俊太郎さんは『うつむく青年』のあとがきの中で「いわゆる現代詩が現代音楽とすれば、この本に収めた作品はポップスにたとえてもいいようなものが多く」と述べられていて、谷川詩集の中から今回の作曲のねらいにピタリと当てはまる詩を選ぶのは難しいことではありませんでした。『うつむく青年』ほか複数の詩集から5 つの詩を選び、「ワクワク」とあわせて6 曲から成る曲集を完成させることができました。
　私たちを歌へと向かわせるものは何でしょうか。歌いたい歌は何でしょうか。──愛する人に捧げるバラード？ しょんぼりしている自分への応援歌？ はたまたニックキあいつへの恨み節？──私たちの心を歌に向かわせるきっかけは多様ですが、そのどれもが愛しい日常のそこかしこにあるものだと言えるでしょう。復興への祈りも、そんな日常と同じ地平の上にあるのではないでしょうか。
　初演では、しままなぶさんによる楽しい演出が付きました。「［序］ワクワク（ショート・ヴァージョン）」は、演出のための何らかの仕掛けになればというねらいで冒頭に置いたもので、これを除いた全6 曲でも充分に成立します。また、演出の有無は任意ですし、個別に曲をピックアップしたり曲順を入れ替えて演奏していただいてもまったく問題ありません。自由な発想で取り上げていただければ幸いです。
　なお、初演に際して表題曲「ワクワク」を改訂したため、初出である“「歌おうNIPPON」プロジェクト”の譜面（混声版）とは異なる部分が生じました。本書を決定稿としたく、ご了承いただければと思います。
信長貴富