第一章 「教授」以前の彼 近くて遠い存在だった父親/生まれて初めての作曲/ビートルズ、ドビュッシー、「独特の匂いを放つ」本たち/デモとジャズと世界認識と/新宿高校でのストライキ/ジョン・ケージの衝撃/「音楽活動」と「社会活動」/「人民の音楽」という思想/「芸大作曲科在学中のピアノ弾き」/「色彩」「音色」という問題意識/「西洋音楽=現代音楽」への幻滅/山下達郎、細野晴臣、矢野顕子との出会い/アヴァンギャルドという第三項/最初のアルバム、『千のナイフ』/傑作『海や山の神様たち』への参加/『千のナイフ』に注ぎ込んだ三三九時間/「THOUSAND KNIVES」と「ISLAND OF WOODS」/高橋悠治とのデュオ/東の果て、そしてその終焉/「この形でいいんだ」/「教授」の名付け親、高橋幸宏/音響合成者、音響想像者/青臭さと老成、絶望と達観/『千のナイフ』の姉妹編/細野晴臣の「イエロウ・マジック」
第二章 「イエロー・マジック」との闘い 「伝説のこたつ集会」/それぞれの音楽性/全米デビュー/ポップ・ミュージックという共通言語/「イエロー・マジック」との闘い/「フュージョン」という「毒」/「イエロー・マジック」、再考/海の向こうから見たニッポン、という視角/「反・YMO」の狼煙/苦肉の策から生まれた『増殖』/パンク・ムーヴメント/ソロ第二作『B― 2 UNIT』/ポスト・パンクでニューウェーブでノーウェーブな音楽/ダブ受容の最良の成果の一つ/き出しの「解体への意志」/BGMにはなり得ない『BGM』/The End of YMO の予感/「テクノ+サイケデリック」=『テクノデリック』/「幸せな雰囲気すらある」『左うでの夢』/暗く過激な音楽から明るく過激な音楽へ/「い・け・な・いルージュマジック」の誕生/『戦場のメリークリスマス』への出演、そして音楽提供/俘虜収容所での「男たちの物語」/坂本龍一、デヴィッド・ボウイ、ビートたけし/セリアズとヨノイのキスシーン/忘れがたき旋律/ベルトルッチ監督との出会い/YMO的戦略と「君に、胸キュン。」/YMOミーツ歌謡曲、『浮気なぼくら』/一九八三年、「散開」宣言/映画『プロパガンダ』/村上春樹の坂本龍一論/ポスト・パンクの申し子、YMO/ふたたび、ひとりに
第四章 「J」との遭遇 YMOの「再生」と『TECHNODON』/「Jポップ」に挑戦した『Sweet Revenge』/GEISHA GIRLS、そして小室哲哉/「Jポップ」への更なる挑戦、『Smoochy』/中谷美紀というミューズ/若者文化の”祭り?、そして内閉化/全国ツアー「坂本龍一PLAYING THE ORCHESTRA “f ”」/『BTTB』という「原点回帰」/「できてしまうこと」と「やりたいこと」/「破壊の世紀」と対峙した『LIFE』/「衝突」「軋轢」「齟齬」というテーマ/村上龍が書き下ろしたテクスト/マルチメディアによる「引用の織物」/「ポストモダン」の音楽家
第五章 調べから響きへ 「9・11」の衝撃/「非戦」というメッセージ/二〇〇二年の『ELEPHANTISM』/アルヴァ・ノトとデジタルな唯物論/不可逆的な変化が刻まれた『CHASM』/クリスチャン・フェネス/社会運動へのコミットメント、そして新レーベルの設立/ダムタイプの高谷史郎とのコラボ/「形がない空気の振動」が音/もっとも純粋で真正な他者愛/「schola」という「啓蒙」プロジェクト/「一枚の絵」のような『out of noise』/アルバムリリースのペースダウン/「社会的活動」という「行きがかり」/坂本龍一の「愛国」/ガン宣告、そして『レヴェナント』の音楽制作/「非同期」の音楽、『async』