合同会社ミューズ・プレス

アーヴィン・ニレジハージ:ドリアン・グレイの肖像

商品情報にスキップ
1 Translation missing: ja.general.slider.of 1

合同会社ミューズ・プレス

アーヴィン・ニレジハージ:ドリアン・グレイの肖像

通常価格 11,000 (税込)
通常価格 セール価格 11,000 (税込)
セール

icon 3,300円以上で送料無料

取り寄せ
目安:7~14日
失われた天才:アーヴィン・ニレジハージ(1903-1987)

アーヴィン・ニレジハージは、20世紀音楽界において最も謎に満ちた足跡を残したハンガリー出身のピアニストです。3歳で作曲を、4歳でピアノを始めた彼は、驚異的な記憶力と独創性を持つ神童として、また、史上初の学術的に研究された「天才」としても歴史に名を残しています。8歳でバッキンガム宮殿にて演奏を行い、12歳でベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と共演、17歳でニューヨークのカーネギーホールにて鮮烈なデビューを飾ったことで、当時の楽壇からは絶賛を浴びました。その演奏は現代のような作曲者の意図を再現しようとする演奏とは一線を画す、強烈な主観性に貫かれた19世紀的な様式に基づくもので、強烈なインパクトを聴き手に引き起こしました。作曲家のアーノルド・シェーンベルクは、ニレジハージを「信じがたいほど独創的で確信に満ちて」おり、「驚異的」かつ「比類なき」技術と共に、「前例がないような」音と「私が遭遇したことがないような表現力」を持つピアニストである、と形容しています。

しかし、靴の紐すら自分で結べなかったと言われるほど甘やかされて育った彼は、アメリカの音楽界で適切に振る舞うことができず、1920年代半ばから商業的な音楽界の主流から弾き出されます。ハリウッドの片隅で十数回に及ぶ結婚と離婚、散発的なリサイタルと放逐、そして極貧生活を繰り返すという、波乱に満ちた隠遁生活を数十年間にわたって送りました。70年代の再発見はやがて日本でのリサイタルにつながり、80年代に2回の来日公演が行われました。招聘には俳優の故・菅原文太氏が尽力し、芥川也寸志氏、井上ひさし氏、安岡章太郎氏ら、各界の著名人が賛同人に加わっています。しかしながら、やがて世界から忘れ去られ、1987年にこの世を去ります。

長らく音楽界の主流から忘れ去られたニレジハージですが、2007年に発表されたケヴィン・バザーナによる伝記出版、そして、2016年にニレジハージの残したアーカイブを正式に取得したソネット・クラシックス(UK)による発掘音源のリリースで、その独特な演奏が再び注目を浴びます。また2019年に出版されたニレジハージの作曲作品集『36 Selected Works for Solo Piano』の出版を契機に、キット・アームストロングなどの著名なピアニストにより作品が演奏されるようになり、作曲家としての再評価も進んでいます。

「ドリアン・グレイの肖像」作品の背景

ピアノ独奏曲「ドリアン・グレイの肖像」は、オスカー・ワイルドの同名小説を題材に、ニレジハージが自身の美学を投影した大規模な作品です。ニレジハージは、オスカー・ワイルドをリストとともに「私にとっての神」と称えていますが、それは若き日のニレジハージにとって、芸術の重要性を擁護し、自己のすべてを芸術に没頭させることを擁護するワイルドの、非道徳性や罪の意識を持たない享楽主義、いわばデカダンスに、人として音楽家として、強い憧れを持っていました。故に、本作は『ドリアン・グレイ』の内容に従ってはいますが、あらすじをただ追う標題作品にとどまらず、ニレジハージ自身の美学を投影した内容となっています。校訂を担当したバザーナは、その長大さと単一楽章という形式において、リストのロ短調ソナタとの類似を指摘しています。

作曲は1921年から開始され(当初はオーケストラ作品として構想)、3回の作業を重ねて1947年に完成されました。今回のエディションで114ページ・4084小節にも渡る長大なこの作品は、ピアノという楽器の音響的限界に挑むような重厚な和声と、劇的な感情の表出が特徴です。ニレジハージは、2000を超える自作の中でも「ドリアン・グレイの肖像」を最高傑作と考えていましたが、その楽譜は未発表のまま今日まで残されていました。元々オーケストラ曲として構想されたがゆえに、ピアノではそのまま再現不可能な部分を含みますが、これはニレジハージの演奏がそうであったように、ピアニスト自身が自己の主観的な解釈によって演奏することを求めていると言えるでしょう。

資料の救出と出版までの経緯

1980年代にニレジハージが日本人ファンの招きに応じて来日公演を行った際、彼は旧高崎芸術短期大学の活動に感銘を受け、自身の死後、個人の資料アーカイブを同校に寄贈することを希望しました。その後、大学は財政上の問題から2013年に閉校となり、貴重なニレジハージ・アーカイブは債権者によって差し押さえられるという危機に直面しました。散逸の危機にあったアーカイブの所有権を巡る交渉は2013年後半から始まり、2016年夏、ソネット・クラシックスのCEOである澤渡朋之氏の手によって正式な保有権が取得されました。これにより、1000作を超える楽譜やドキュメンタリー資料の本格的な調査が可能となりました。2018年、澤渡氏は長年失われたと考えられていた未発表の大作「ドリアン・グレイの肖像」の86ページのコピーを発見し、さらに2021年には全96ページを網羅する別のコピーの特定に至りました。

出版にあたって校訂を主に担当したのは、ニレジハージの決定的な伝記『失われた天才(Lost Genius)』の著者として知られるケヴィン・バザーナ氏です。バザーナは2019年に発売された『36 Selected Works for Solo Piano』も校訂しており、その経験からニレジハージの独特な省略記譜法を一般のピアニストでも演奏できるように直すだけでなく、明らかな誤記などを訂正、独自の演奏記号についての解説などを付し、演奏に用いることのできる「校訂版」を完成させました。また、本作を演奏する上で欠かせない、ニレジハージの人生と作曲について、ケヴィン・バザーナによる詳細な解説が付属します。

本プロジェクトは、ソネット・クラシックスとミューズ・プレスの共同出版であり、国際アーヴィン・ニレジハージ財団の支持を得た、歴史的な初出版となります。

商品詳細

発売日 2026/1/20
サイズ A4変
JAN 9790707804643
ISBN 9790707804643
楽器 ピアノ