広がりのあるサウンド作りならこのエフェクター!「ディレイ」使いこなしガイド【Go!Go! GUITAR プレイバック】


山びこ効果を再現する残響系エフェクター、それが「ディレイ」だ! 歪み系に次ぐ定番エフェクターだけど、使い方がチンプンカンプン…という迷える方のために、SUPER BEAVERの柳沢亮太を講師に迎え、定番のセッティングを伝授してもらったぞ!

柳沢亮太によるデモプレイはコチラからチェック!

 >デモプレイ動画はコチラ!  

 

ディレイって何? どんなときに使うの?

 

奥行きや臨場感を演出する“残響系”エフェクターの一種、それがディレイだ。ディレイは“遅延”という意味で、入力された音を繰り返し再生することで山びこ効果を再現することができる。その活用法は非常に多岐に渡り、音のサステイン(伸び)を稼ぐことでギターソロをゴージャスにしたり、バッキングに厚みを出したりと、リード/バッキングを問わず使うことができる。プレイの幅が格段に広がるので、1台は手に入れたいペダルだ。

●ディレイを使うことでこんなメリットが!
 音が伸びやかに 
音の余韻を印象的にすることで、単音を用いたフレーズやソロでより広がりのある空間を演出することが可能になる。

 音圧がプラス! 
空間の広がりだけでなく、ディレイを用いることで音に厚みが生まれる。常にディレイをかけているというプロギタリストも。

 雰囲気が生まれる 
音を歪ませてのギターソロでも、クリーントーンによるアルペジオでも、奥行きをプラスすることでドラマティックな雰囲気に。

 ディレイならではのフレーズが作れる 
フレーズのアイデアやインスピレーションが得られやすいのも魅力。プレイヤーとして新しい扉を開いてくれること請け合い。

 

デジタルのディレイ/アナログって何?

 

●トーンはもちろん機能性にも大きな違いが!
初期のアナログディレイは、BBDと呼ばれる遅延粒子を使用したものが主流で、他の楽器のサウンドに馴染みやすい温かい音色が特徴。デジタル回路を用いることで、入力された信号をデジタル信号へと変換するものがデジタルディレイ。現在は、デジタル回路でアナログの音色を再現しているものも多い。

 デジタルディレイ 

ディレイ使いこなし(1)

 

 アナログディレイ 

ディレイ使いこなし(2)

 

ディレイのツマミの役割

 

●まずはツマミの効果を把握することが大事!
モデルによってツマミの構成や名称は異なるが、基本的にはディレイ音の音量、ディレイタイム、ディレイ音の繰り返し回数の調整が可能だ。

 LEVEL 
ディレイ音の音量を調節。レベルを上げる(右に回す)ほどエフェクト音が大きくなる。

 TIME 
ディレイタイムを調節。ディレイタイムとは、音を鳴らしてからディレイ音が返ってくるまでの時間。

 FEED BACK 
フィードバック量(ディレイ音の繰り返し回数)を調節するツマミ。“REPEAT”と表記されることも。

 MODE 
ディレイ効果を切り替える。ディレイタイムの可変範囲や音色を切り替えられることが多い。

 

SUPER BEAVERの音世界に欠かせないディレイ

 

●音像が薄くならないような効果をディレイで狙う
「SUPER BEAVERは楽器隊が3人しかいなくて、要は3ピースバンドと同じ構成なので、ギターソロや単音を弾くと音圧が薄くなるんです。特に音と音に隙間がある曲だと“間”が気になるので、音の伸びやかさをプラスして、ソロを1人で弾いているけど音像としては薄くならないような効果を狙ってディレイを使うことが多いですね。ソロや単音が伸びやかになって、自分たちも心地良くプレイすることができます。
僕の場合、メインの音があってそれに伸びやかさを足すという考え方なので、演出過多にならないようレベルを突っ込みすぎない(上げすぎない)ようにしています。音を止めると、残響音が少し残るくらいの設定。もちろんバラードだったり、残響音を意図的に残す場合もあります。SUPER BEAVERで使うディレイのバリエーションは、主にギターソロとかアルペジオで使うメインのロングディレイ、ショートディレイ、モジュレーション効果を足した付点8分ディレイの3つですね。
まずはディレイが使われている好きな楽曲をコピーして、ディレイをいじってみて、どういう設定なのか音源を聴きながら近づけていくのがいいと思います」(柳沢)

 柳沢亮太の使用ディレイ 
LINE6 DL4 Delay Modeler

ディレイ使いこなし(3)
▲00年の発売以来、根強い人気を誇る名機。伝説的なエコーとディレイボックスをベースとした16のモデルを搭載。

 

ディレイ使いこなし(4)

BOSS DD-7
▲高音質・最大6.4秒のロングディレイなど、多彩な機能を盛り込んだデジタルディレイの決定版。充実の8モードを搭載。

 

Pattern 1 ショートディレイ

 

 ショートディレイとは…? 
ディレイタイムを10~100ms程度に設定するディレイ。音に厚みが生まれ、金属音的な響きが得られる。応用編として、フィードバックを1回のみにしてエフェクトレベルを大きめに設定すれば、ギター2本で同時に弾いているようなダブリング効果が得られる。

図1.png

▲ギターを弾いてから、短い間隔でディレイ音が鳴るのがショートディレイ。

 

図2.png

▲“ms”は“ミリセコンド”の略で、1秒が1000msなので100msは0.1秒。

 

 柳沢流のショートディレイ活用術 
「ショートディレイって金属的な音が特徴で、僕は攻撃的なイメージがあると思っているので、『わたくしごと』では1曲ほぼ全編かけっぱなしにしています。あるかないかでは、印象が全然違います!」(柳沢)

●休符を多用することでディレイ音を強調!

譜面1.png

▲休符を生かしたロックなフレーズ。休符を多用することで、ディレイ音がより際立っている。低音弦側をダウン、高音弦側をアップピッキングで弾くと攻略しやすい。

 

Pattern 2 ロングディレイ

 

 ロングディレイとは…? 
ディレイタイムを約300ms〜と長めに設定するのがロングディレイだ。エフェクトレベルを上げ過ぎると他パートの邪魔になってしまったり、アンサンブルを壊してしまうので、設定には細心の注意を払うようにしよう。

 

図3.png

▲ロングディレイを使う場合、曲のテンポに合わせてディレイタイムを設定する。

 

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▲400msなので、弾いてからディレイ音が返ってくるまでのディレイタイムは0.4秒。

 

 柳沢流のロングディレイ活用術 
「ロングディレイはアルペジオやソロでよく使います。ディレイタイムは400msくらいで、曲中で場面によってオン/オフを切り替えることが多い。オクターブ奏法も音が少し薄くなるので、ディレイを踏んで厚みを足します」(柳沢)

●相性抜群! アルペジオ+ロングディレイ

譜面2.png

▲バラードで重宝するアルペジオでのロングディレイ。動画では譜例のロングバージョンと、歪みサウンドによる別フレーズを紹介。

 

MCの雰囲気作りで重宝するディレイ

 

●ディレイを用いることで世界に入り込める
「ライブでは渋谷(Vo)のMC中に、雰囲気を出すためにバックでディレイをかけながらアルペジオを弾くことがあります。映画やドラマを観てても、音楽が入ってきた瞬間に感情の盛り上がり方がぐっと加速するときがあるじゃないですか。ディレイを用いることで、MCを話しているほうも気持ちが乗るし、聴いているほうも世界に入り込める。それがそもそも音楽の素晴らしいところだと思っているので、そういう使い方はけっこうします。あと、ライブでディレイを使う際は、ディレイがかかりすぎなのか足りないのかをよく確認します。ライブハウスの特性もあるし、大きな音を出して初めてわかることもあるので、微調整は必ずしましょう」(柳沢) 

 ディレイを使うことでMCがより伝わる 

ディレイ使いこなし(6)

▲渋谷龍太(Vo)によるMC中は、ディレイを用いたアルペジオを弾いて雰囲気を演出することも。

 

Pattern 3 付点8分ディレイ

 

 付点8分ディレイとは…? 
原音に対して付点8分音符(8分音符+16分音符=4分の3拍)のタイミングでディレイ音が鳴るように設定することで、8分のフレーズを弾いただけで複雑な16分のフレーズのような効果を演出することができる。

 

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▲演奏するテンポを把握し、原音に対して4分の3拍遅れで設定しよう。

 

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▲モードをMODULATEにすることで、エフェクト音に揺らぎをプラス。

 

 柳沢流の付点8分ディレイ活用術 
「明らかに景色(印象)を変えたいときに使います。ディレイタイムが深め(長め)で、モジュレーションを追加すると、楽曲の世界観を担う音色に一気に変化すると思います。いい意味で混沌とします」(柳沢)

●付点8分の定番フレーズ

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▲譜面上は一般的な8分音符だが、付点8分ディレイをかけることで不思議な響きに変化。ブリッジミュートをかけながら弾くと効果的。

 

Pattern 4 リバースディレイ

 

 リバースディレイとは…? 
テープを逆回転させたような独特なサウンドのリバースディレイ。多機能なモデルに搭載されていることが多く、ディレイ音のアタック音が鳴らない個性的なサウンド。幻想的な世界を作り出すことができる。

図7.png

▲極端なイメージだが、原音が減衰するのではなく増長していく印象に。

 

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▲モードをREVERSEに設定。ディレイタイムは長めにすると◎。

 

 柳沢流のリバースディレイ活用術 
「SUPER BEAVERで使うことはほぼないですが、ニュアンスとしてはアタック音を強調させないで弾くボリューム奏法に似ています。幻想的なフレーズに使えますね」(柳沢)

●幻想的な響きを生むリバースディレイ

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▲音を伸ばす箇所や休符を多く設けることで、リバースディレイならではの逆再生サウンドをより聴かせることができる。

 

他にもまだある! 個性溢れるディレイ

 

●ショートディレイの派生形を紹介!
今回の特集で紹介したディレイはまだほんの一部。ショートディレイというカテゴリーの中でも派生テクは他にも存在するので、下記を参考にトライしてみよう!

 ダブリングディレイ 

図9.png

▲ディレイタイムを10~100msに設定。フィードバックを1回のみにしてエフェクトレベルを大きめ(原音とほぼ同じ大きさ)に設定すれば、ギター2本で同時に弾いているような“ダブリング効果”を得ることができる。

 スラップバック 

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▲ディレイタイムを100~200msに設定し、3連符のタイミングでディレイをかけたのが“スラップバック”。部屋鳴りのような反響音が特徴で、エフェクトレベルを下げるとリバーブのような効果を得ることができる。


●1台あったらかなり活躍するエフェクターです!

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「今回は、ショートディレイやロングディレイ、モジュレーションだったりいろいろな設定のディレイを紹介したけど、ディレイはアルペジオの雰囲気作りだったり世界観を変えたり幅広い使い方ができます。1台あったらかなり活躍するエフェクターだと思うので、持っていない人はこれを機に入手してみてください!」(柳沢)
 

 


 

【PROFILE】
スーパー・ビーバー/05年結成。メンバーは、渋谷龍太(Vo)、柳沢亮太(Gt)上杉研太(Ba)、藤原”31才”広明(Dr)。07年、初の全国流通作品となるミニアルバム『日常』をリリース。

(Go!Go! GUITAR 2017年11月号に掲載した内容を再編集したものです)

 

Edit:溝口元海

 

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