基本テクニックはひととおり覚えて人並みにギターの演奏はできる、と思っているそこのアナタ!
本当に弾けていますか? なんとなく弾ける“つもり”になっていませんか??
コツコツ練習しなければいけないのは速弾きやハイテクプレイばかりではありません! 基本的なテクニックこそ、実は日々の積み重ねや意識が大切なのです!!
ここではプロだから教えられる、演奏テクニックに本当に大切な意識と練習を伝授します!
解説・模範演奏/生本直毅
◆この記事で学べること
・ギターの表現力を左右するテクニック“ビブラート”
・しっかり学ぼう! ビブラートの基本
・いざ、実践! ビブラート練習フレーズ
■ ギターの表現力を左右するテクニック“ビブラート”
あなたは、どんな歌を聴いたら「この人、歌が上手いな~」と思いますか? それはきっと、「音程(ピッチ)がいい」「表現力が豊か」「ロングトーンが魅力的」などでしょう。ということは…ギターでメロディーやソロを弾くときにも同じことが言えるのではないでしょうか??
「この人のギターは歌っているようで上手いな〜」と思わせるためにとても重要なテクニックが「ビブラート」なのです!!
そんな重要なテクニックなのに、普段は「ビブラート」の練習を疎かにしていませんか?
「とりあえず弦を揺らしておけばビブラートっぽくなるかな」「練習したフレーズを弾くことで頭がいっぱいで、表現するところまで出来てないや」という人も実はたくさんいるのではないでしょうか?
何を隠そう、筆者もギターを始めてから数年はそうでした。高校卒業まで独学でギターを練習して、「この街の同学年の中ではギターが一番上手い」「速弾きならすぐプロ級になれるかも」と完全にお山の大将気分で上京し音楽の専門学校に入学。そこで初めて、バリバリプロのギタリストの先生を目の前にしたときの圧倒的な力の差…。
「何もかもレベルが違う、、、」
プロギタリストはたった1音ロングトーンを弾いただけでもその違いは歴然、「何だこのロングトーンの色っぽさは…?」
それを紐解いていくと、自分との圧倒的な差は「ビブラート」の上手さだったのです!
自分のビブラートは、歌が下手な人の不安定なロングトーンみたいにヘナヘナしていて、何だか音も途切れそうで危なっかしい。それもそのはず、それまでに「ビブラート」の練習なんてしたことありませんでした。それからは必死に「ビブラート」を練習し、ジェフ・ベックやラリー・カールトン、サンタナ、ロベン・フォード...など、ギターを歌うように弾くプレイヤーをいっぱい聴いて練習しました。
これからプロをめざす/めざさないは別としても、自分のギターのレベルを上げるために必要でありながら、あまり練習をして来なかったであろうテクニックが「ビブラート」だと思います。
そんな人たちにも、これから挙げる解説と練習フレーズでビブラートの基本テクニックとコツを掴んでもらって、今までよりももっともっと感情的で歌うようなリードギターを奏でて、聴く人たちをたくさん魅了しちゃって欲しいです!
ギターソロが入っていないヒットソングが多くなったこの世の中、まだまだギターは捨てたもんじゃないって所を魅せつけちゃいましょう!
■ しっかり学ぼう! ビブラートの基本
「ビブラート」とは簡単に言うと音程を揺らす表現です。ギターでビブラートをかけるときは、わずかなチョーキングアップ・チョーキングダウンを連続して細かく行ないます。
なので、ギターの構造上、元の音程から上げる〜元の音程に戻す、を細かく連続させることになります。(アームを使えば音程を下げたビブラートも可能ですが、今回は割愛します。)
左手は、ネックを握りこむ親指と人差指を支点にして、ドアノブを回すように手首を回すイメージで、弦を上下に揺らします。決して指でクネクネ弦を揺らさないようにしましょう。指は弦を押さえた形のまま手首を回すことで、安定したビブラートを得られます。
弦を揺らす方向は1〜5弦は上方向(6弦方向)、6弦は下方向(1弦方向)に揺らすのが、安定させやすいと思いますが、人によって4〜6弦は下方向に揺らすのもありでしょう。自分なりにやりやすい形を見つけてみてください。
共通して言えることは、いずれも指先をしっかり立てて押弦することが大事だということです。そうでなければ、弦を揺らすときに、指先が不安定になってしまい、ビブラートをコントロール出来なくなります。
ビブラートを掛けるときに、特に注意したいことは、
①音程の揺れる幅とスピードが一定であること
②弦を上げ下げする際、必ず元の音程まで下げ切ること
③不要弦のノイズが鳴らないように、ミュートをかけること
の3点です。
まず、①については図1を見てみましょう。良い例のように、音程の上げ幅と、上げ下げの波のスピードを一定にすることで、気持ち良い揺らぎを得られ、「上手なビブラート」に聴かせることが出来ます。
悪い例のように、音程の幅も揺れるスピードも一定ではないビブラートは、不安定で音痴な「下手なビブラート」に聴こえてしまいます。
次に②は、特に力み過ぎると起きやすい現象で、音程を元に戻しきれないビブラートは、うわずって聴こえてしまい、こちらも音痴なビブラートになってしまうので、図2のイメージで音痴にならないようにしましょう。
最後に意外と難しいのが、③の不要弦のミュートです。ビブラートのときに押弦する指は、なるべく中指か薬指を使うことがオススメです。なぜなら、人差指を不要弦のミュートに使えるからです。ビブラートは弦を揺らすため、隣の弦に指が当たってノイズが出がちなので、人差指で不要弦に軽く触れて鳴らないようにミュートしましょう。
運指的にやむをえず、人差指で押弦した状態でビブラートをかけるときは、余っている中指を使うか、人差指の指先で隣の弦をミュートしましょう。
■ いざ、実践! ビブラート練習フレーズ
それでは、練習フレーズで上手なビブラートの「コツ」を掴んでいきましょう!
・EX-1
まずは、ロングトーンで綺麗に安定したビブラートをかける練習フレーズ。3つの注意点に気をつけながら、色気のあるビブラートをめざしましょう!
薬指、中指を使ったビブラートで、人差指を使った不要弦のミュートや、手首でドアノブを回す感覚を体に染み込ませてください。
慣れてきたら、音程の揺れ幅や、揺れる速さを変えて挑戦してみましょう! あまりにゆっくりすぎるのはただの音痴に聴こえてしまいますが、自分で心地よいと思えるビブラートのかかり具合を2〜3パターン持っておくと、表現したい感情によって使い分けられるようになります!
・EX-2
今度はハイポジションを中心に、装飾的なスライドも交えたフレーズの中でのビブラート練習フレーズ。不要弦のミュートもちょっと難しくなります。人差指を使ったビブラートも出てくるので注意!
・EX-3
次は、テンションの高い巻弦でのビブラートに慣れていきましょう。巻弦は、より手首を使った安定した弦の揺れ幅、不要弦のミュートを意識しないと綺麗なビブラートはかけにくいので、気をつけましょう。
・EX-4
最後は、応用編として和音でのビブラートに挑戦しましょう! 基本的に気をつけることは同じです。2本の弦の揺れ方を揃える意識を持ちましょう。例えば2弦と3弦を使った和音で、それぞれの弦の音程の揺れ幅が違うと、和音が濁ってしまうので注意!
それと、最後の1音は人差指をセーハしてかけるので、手を横に(ネック方向とブリッジ方向)に揺らして、弦を伸ばしたり縮めるイメージでかけます。この横に揺らすビブラートのときは、ネックを握り込まず、親指をネック裏に立てるクラシックスタイルか、親指をネックから離してしまうとやりやすいので、自分に合う方で試してみましょう。
【まとめ】
実際に楽曲の中でビブラートをかけるとき、その楽曲や表現したい感情にあわせてビブラートをかけられるようになるのが音楽的に一番なので、「こういうときはこういうビブラート」みたいな決まりはありません。だからこそ、弾き手の個性が出せる奏法だと思います。
まずは、基礎的な技術をしっかり身につけた上で、感情表現を爆発させて欲しいです! 究極は、ロングトーン1発で泣けるビブラートだと思います!
いろんなギタリストの歌い回しを見たり聴いたりして参考にしながら、自分の個性を探してみてください! ライブ動画などは、視覚的にもどうやって演奏しているか確認出来るので、とても参考になると思います。
~オススメギタリスト~
エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミ・ヘンドリックス、ラリー・カールトン、ブライアン・メイ、B.B.キング、サンタナ、ロベン・フォード、ジョン・メイヤー...etc.
【著者プロフィール】
生本直毅(いくもと・なおき)
ギタリスト、作編曲家
高校卒業後、ヤマハ音楽院に入学し、ギターと音楽制作を学ぶ。ヤマハ音楽院卒業後、ギタリストの西川進氏のアシスタントとしてプロの現場を学んだのち、プロギタリストとして様々なアーティストのライブやレコーディングでサポート活動を始める現在に至る。
また、アレンジャー活動やアーティストへのギターレッスン、ギター雑誌への執筆など幅広く行っており、2014年にはギター教則本も出版。
X(旧Twitter):@Naoki_Ikumoto
■著書
プロ・ギタリストの技術と知識と思考法がわかる本 CD付
発行:シンコーミュージックエンタテイメント