
クラシック音楽の名作を生み出した作曲家たちを、3分程度で読み切れる短い伝記としてご紹介します。しかし、どの人物もその人生を3分で語り尽くすことはできません。今回は代表的な9つの視点に絞ってご紹介しますが、より深く知ることで演奏にも大きな違いが生まれる瞬間があるでしょう。もしこの記事に物足りなさを感じたり、さらなる背景が知りたいと感じた場合、それは「学びの扉が開いた瞬間」とも言えます。ぜひご自身でさらに深く追求してみてください。
本シリーズでは、選曲や演奏に役立つ小さな手掛かりとなるように、そしてご自身の深い学びのきっかけとなるようご紹介していきます。
第7回目で取り上げる作曲家は「フリッツ・クライスラー」です。
1.20世紀を代表する作曲家
フリッツ・クライスラー(1875-1962)は、オーストリア・ウィーン生まれの作曲家です。父は町の開業医でしたが、音楽愛好家でアマチュアの弦楽器奏者でもありました。クライスラーは20世紀を代表するバイオリニストであり、優れた作曲家としても知られています。
2.神童としての輝かしい出発
クライスラーは幼い頃から才能を発揮し、わずか7歳でウィーン音楽院に入学、10歳にして首席で卒業しました。その後、名門パリ音楽院へ留学し、こちらも12歳で首席で卒業しています。13歳の頃には、ウィーン・フィルと共演。その類まれな演奏技術と表現力で「神童」として注目を集めました。
3.揺れた青春時代
クライスラーは1895年、オーストリア帝国陸軍に入隊しました。一時はバイオリンを捨て、軍人になろうと決心したこともありましたが、再び音楽の世界へと復帰します。その後、演奏活動を再開し、少しずつ作曲活動も始めていきました。
4.偽作
クライスラーは、自身が作曲した作品を、主にバロック期の作曲家(特にヴィヴァルディやバッハなど)の作品として発表する「偽作」を数多く行いました。これらは長年発覚せず、後に彼自身が真実を明かした際に大きな話題となりました。
5.豊かな感情表現
「愛の喜び」「愛の悲しみ」は、クライスラーのバイオリニストとしての表現力と、メロディメーカーとしての才能が存分に発揮された代表作です。彼の音楽は、単なる技巧だけでなく、感情の豊かさで現在の聴衆をも魅了しています。
6.敏腕マネージャーの存在
クライスラーはアメリカ人女性ハリエット・リースと結婚しました。彼女は彼の才能を最大限に引き出すべく、音楽に関すること以外はさせず、音楽家として大成する大きな支えとなった敏腕マネージャーでもありました。彼の歌曲の多くは、この妻への深い愛情から書かれたと言われています。
7.アメリカで築いた名声
クライスラーは20世紀初頭からアメリカを拠点に活動し、名門カーネギーホールなどで演奏を重ね、聴衆から熱狂的な絶賛を受けました。その豊かな表現力と超絶技巧でアメリカ音楽界に大きな足跡を残し、以降、世界的な名バイオリニストとしても活躍しました。
8.楽器への深い愛情と名器との出会い
クライスラーはバイオリニストとして、ストラディバリウスやグァルネリといった伝説的な名器を愛用し、その響きを最大限に引き出しました。楽器を単なる道具ではなく、共に音楽を創るパートナーとして深く愛し、その演奏は名器の魂をも宿しているかのようでした。
9.慈善活動と晩年
クライスラーは富や名声を必要以上に求めず、慈善活動も積極的に行っていました。貧しい後輩バイオリニストに名器を贈与するなど、その人間性も高く評価されています。晩年には交通事故で重傷を負うなど苦難もありましたが、86歳で亡くなるまで音楽に貢献し続けました。
フリッツ・クライスラーは2025年に生誕150年を迎えます。サイト内【作曲家 アニバーサリー 2025】では代表作のおすすめ商品をご覧いただけます。その他アニバーサリーを迎える作曲家もご紹介していますので、ぜひこちらもあわせてご覧ください。
次回は「ルチアーノ・ベリオ」を取り上げます。
(※この記事は『Sheet Music Store』のInstagramアカウントで投稿された内容を記事形式で掲載しています。)
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