1人でギターの練習をしていると、知らぬ間に間違ったやり方をしているなんてことがある。言葉は知っていても、実際にどうやるか分からなくて、「変なクセがついちゃった!」な〜んて結果にもなりかねない。方向を間違うことはあっても努力だけは怠らないザセツ君と、ギター奏法の基礎を一緒に学んでいこう!
【プロフィール】
左:ザセツ君 (本名: 財園寺せつ夫)
ご近所のひな祭りに参加したザセツ君。頂いたお菓子も食べ終わり、なんだか手持ち無沙汰。ひな人形をじーっと見ていたら閃いた! あろうことか、五人囃子にギターを持たせてしまい周りから大ひんしゅく。
右:ジミ先生
物理の先生で科学部の顧問。エフェクター作りが趣味で、エレキのことはこの人に訊け!と評判。老けてみられるが実は27歳。日サロ通いが欠かせない。
解説/竹内一弘 マンガ/ Dobby.
◉いきなりウルトラCに挑戦している
速弾きのコツってのもあるけど、わかったから速く弾けるわけじゃない。速弾きはスポーツと同じで、順を追って上達していくもの。走り高跳びだって少しずつバーを上げていくでしょ? 120cmを飛ぶためには、まず110cmを飛べるようにするってこと。
◉通常のピッキングの延長として速弾きをしている
普段のピッキングスタイルのままで速弾きしようとしていないかな? ピッキング幅の大きい普段弾きでは恐らくスピードは上がらないし、疲れてしまってリズムも安定しないはずだ。ピックを素早く動かすには、それに適したピッキングスタイルがある。
◉左手のポジションに無頓着
ギターは左右の手のタイミングをぴったり合わせないと音が出ないよね。同じ弦を弾き続けることができるのであれば、これは意外と楽。逆に言えば、同じ弦で弾けるフレーズで速弾きをするということ。プロは間違いなくこのことを意識しているよ。
速弾きはスポーツと同じ。今、自分が弾ける最高スピードからBPMで1ずつ上げていくという地道な練習をするしかない。練習をサボるとあっという間にスピードは落ちていくので、速弾きは継続的なトレーニングでのみ成し遂げられるものと考えよう。
通常のフレーズでは、恐らく右手の手刀をブリッジに乗せるフォームで弾いていると思うけど、そのピッキングは手首と指先の“上下の動き”になっているはずだ(図1ⓐ)。実は、この動きではなかなかスピードが上がらない。
素早くピッキングするには、手刀をブリッジから浮かせて、手首のひねりでピックを動かすんだ。指先でピックを上下に振る動作は行わず、ピックはそこそこ強めに握って固定する。そして、腕の関節から指先までを1本の棒のようなイメージで固めてしまおう。これが速弾き限定のピッキング方法だ(図1ⓑ)。まずはリズムを無視して、できるだけ速くピックを動かすことから慣らしていき、徐々にリズムもコントロールできるようにしていこう。それを踏まえてEx-2にチャレンジ。
ピアノは鍵盤を押せば音が出るのでとても速く弾けるのだけど、ギターではそうはいかないよね。右手、左手のどちらか一方が速く動いても、タイミングが合わないと音にならないわけだから。そんなギターでできるだけスピードを上げるためには、両手の負担を極力軽くするしかない。その方法はたった1つしかなく、なるべく同じ弦で弾き続けることだ。
弦が移動すると、特に右手が一気に忙しくなるからね。速弾きには、3ノートパーストリングという方法が適している。つまり、1本の弦で3音弾くということだ(Ex-3)。この考え方は速弾きギタリストの常識になっているので、しっかり練習しておこう。Ex-4で3ノートパーストリングを体感だ!
◉ハンマリング&プリングで弾く
スピードが上がらない原因は左右の手のタイミングが合わないことだよね。では、タイミングを合わせなくてもフレーズが弾けるとしたら、まるでピアノのように速く弾けるだろう。そんな発想から、速弾きギタリストはハンマリング&プリング(H&P)を多用するようになったんだ。だから、これは妥協策ではなく、むしろ速弾きの主流といえる。
H&Pを使う目的はピッキングの回数を減らすことだから、[ポイント3]で解説した3ノートパーストリングの考え方が有効になることはわかるよね。では、これですべて解決かというと実はそうでもないんだ。フルピッキングの速弾きには“夢中で弾く姿”が音に表れ、リスナーはそれに興奮するという面が無視できないのだけど、H&Pの速弾きは流暢なので、リスナーはあまり熱くなれないという一面があるんだ。コンピュータの打ち込みでどんなに速いフレーズをプログラムしても単に速いだけという印象になるのと同じ。そんなわけで、やっぱり速弾きの王道はフルピッキングだと心得つつ、H&Pの速弾きもマスターしておくという理解で取り組んでいこう(Ex-5)。
(Go!Go! GUITAR 2014年4月号に掲載した内容を再編集したものです)
Edit:溝口元海
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