今年もギターの“大敵”、梅雨シーズンが到来。湿気対策はもちろん、雨で家にいる時間が増えるこの時期、ぜひご自身の楽器の状態をチェックする良い機会。今回は基礎編に続き、リペアショップなどで行われるプロのメンテナンス作業を紹介します。
構成/Go! Go! GUITAR編集部
取材協力/草野豊(kusakusa88)
◆この記事で学べること
・メンテナンス手順01:状態確認〜クリーニング準備
・メンテナンス手順02:ボディーのクリーニング〜ネック調整
・メンテナンス手順03:電装系の確認・調整〜組み直し
・メンテナンス手順04:弦高・オクターブ・ピックアップ高調整〜最終チェック
実際のメンテナンス作業を見てみよう
楽器店やリペアショップなどにギターのメンテナンスを依頼するケースは、不具合・不調の解消を目的とする場合と、ベストコンディションに保つことを目的とする場合とがあります。プロミュージシャンや頻繁にライブ活動をしている人以外、なかなか普段使いでギターをメンテナンスに出す習慣はないかもしれません。普段自分自身で楽器の調整を行なっている人でも、定期的にプロのメンテナンスを受けることで大切な楽器がその性能を100%発揮できる環境を整えられるのでオススメです。
ここではリペアショップに持ち込まれたギターを実際にメンテナンスする工程を順を追ってご紹介します。あくまでも作業工程は一例となりますが、プロのリペアマンがどのような作業をしているかを見ていきましょう。
◇対象機種:フェンダー ストラトキャスター
〜今回のメンテナンスメニュー〜 ※順不同
ギターの全体セットアップ(調整)
・ロッド(ネック調整)
・オクターブ調整
・弦高調整
・ピックアップの高さを含めた電装チェック
・ナット溝調整
全体クリーニング
メンテナンス手順01:状態確認〜クリーニング準備
まずはギター全体をひととおり見ていきます。周りの状態、傷がないかなどをチェックし、エンドピンや各種パーツの緩みなど、傷を含めて確認します。
次に、弦を外してクリーニングができる状態まで、できる限りパーツを外していきます。
◎工程
弦をすべて外す
↓
バックプレートを外し、トレモロスプリングを外す
↓
ネックジョイント部のボルトを抜き、ネックプレートを外したら、ボディーからネックを外す
↓
ネックの状態を確認する
↓
ピックガードのネジを外し、ピックアップや配線、ポットなどの状態を確認
↓
ジャックプレートを外し、配線などの確認
↓
はんだ付けを外して電装ごとピックガードを外す
↓
トレモロブリッジを外す
↓
ジャックプレートを取り外す
メンテナンス手順02:ボディーのクリーニング〜ネック調整
パーツ類を外したボディー全体のクリーニングを行ないます。ボディー表面はポリッシュを使い、クロスで拭き上げます。
続いて、ネック周りのクリーニングとロッド調整(ネック調整)を行ないます。
◎工程
外周を目視で確認
↓
ペグの動作確認
↓
ポリッシュを吹き付けクロスで拭き上げる
今回はフレットのファイリングやすり合わせは行ないませんが、フレット磨きおよびクリーニングを行ないます。
続いて指板面のクリーニングを行ないます。ポリッシュを吹き付け、歯ブラシで手あかやクリーナーワックスの残骸を掻き落とします。
次にペグの緩み、パーツのネジの緩みを確認します。
最後にロッド調整をします。すり合わせを行なっていないので、弦のゲージに合わせてセッティングします。やや順反りだったのでロッドを締めます。
メンテナンス手順03:電装系の確認・調整〜組み直し
次は、ピックアップの高さや配線を含めたクリーニングとチェックです。はんだ浮きや配線周り、パネルのクリーニングも含めて作業します。
◎工程
ポリッシュとクロスでクリーニングを行なう。細かなごみは歯ブラシで
↓
ボリュームポット、レバースイッチは金属接点の洗浄剤を吹きかけ接点をキレイにする
↓
ボリュームポットは10にした付近、0にした付近がホコリがたまりやすく、カーボン部分の抵抗に傷もつきやすいのでそこでガリが出る確率が高くなる。洗浄しながら動かしてスムーズに動くように
↓
レバースイッチ部分も接点を動かしながら洗浄する
今回は比較的キレイな個体なので、はんだの修正や配線の修正は不要と判断しました。
続いてジャックです。ジャックは接点の部分が摩耗していることが多く見受けられるため洗浄剤でクリーニング、接点が削れているときは保険として交換することをオススメします。
先ほどクリーニングしたボディーはビス穴やトレモロのビス穴を必要に応じて補修します。その間に止めビス(トレモロ、ネックジョイント)はアルコールや洗浄剤などに入れて汚れやサビ、ホコリなどをあらかじめ落としてキレイにしておきます。他の金属パーツも一緒に行ないます。
次はトレモロブリッジです。今回はすべてバラバラにせず作業します。ブロックとプレートに緩みがないか、裏側にホコリ、汚れ、サビなどが出ていないか、ネジ、ばね、イモネジにさびや汚れが付いていないかを確認しながら、歯ブラシなどで汚れを落とし、クロスで空拭きするだけでかなりキレイになります。
プレートやネジがサビている場合は洗浄剤でクリーニングして、オイルなどを塗って再び組み上げます。
組み直していきます。
◎工程
洗浄剤につけておいた金属パーツを取り出し、クロスで拭き上げる
↓
ボディにトレモロブリッジを取り付ける
↓
シンクロナイズドトレモロの場合、完全に止める前にオイルでネジの根本周りをグリスアップする。あまり余分なオイルをつけると汚れがつきやすくなるので気持ち少なめにする
↓
トレモロユニットの取り付けネジはぴったりより少しすき間が空くくらいに締める。(トレモロスプリングの張力で後ろに引っ張られるため)
↓
クリーニングし、接点復活剤を使って補修したジャックを取り付ける
↓
ポットやセレクターにケーブルをはんだ付けしてピックガードを取り付ける
↓
配線のチェックを行なう。リア/センター/フロントピックアップをセレクターで選択し、反応を確認、ボリューム、トーンも同様に反応を確認する
↓
トレモロスプリングを元通りに付け直す。弦を張ってから改めてスプリングの調整を行なう
↓
洗浄済みのプレートとボルトでロッド調整、クリーニング済みのネックを取り付ける。
ボルトは一気にすべて留めるのではなく、対角線上に手でトルクマネジメントしながら締めていく。(ギターにもよるが)9割~9割5分程度の力で留めて調整する。
メンテナンス手順04:弦高・オクターブ・ピックアップ高調整〜最終チェック
仮組みが終わったら指板をレモンオイルでクリーニングを行なうとともに潤いを与えます。
続いてナット部分もオイルでクリーニングします。ナットの溝はオイルをつけたフロスを使って溝1本ごとの汚れを除去しましょう。手の脂や手あか、弦についていたホコリ、フィンガーイーズやカーボン(鉛筆の芯)などはこれでキレイにします。
新しい弦を張ります。ストラトに搭載されているシンクロナイズドトレモロは裏通しなので、ボールエンドがしっかりと止まるように引き出します。
縦入れのペグは3巻き分(ペグ2つ分)ほどの余裕を取ってカットしたら、溝に差し込んで弦を巻き取ります。
暫定的にチューニングをしてからネックの状態、弦高の確認をしていきます。各弦で弦高にバラツキがある場合はサドルの高さを調整をします。指板のRに合わせて調整するのが通常のセッティングです。
再度チューニングしてオクターブ調整を行ないます。12フレット上のハーモニクスと原音が同じになるようにサドル位置を調整します。動かしたら再度チューニングを合わせて確認します。
クリーニング済みのトレモロユニットにグリスが馴染むようにアームを動かします。
すべての調整が終わったらアンプから音を出して電装系やジャックにガリが出ていないかをチェックする。
ビンテージタイプのピックアップの高さは最終フレットを押さえた時点で1.5~2mmくらいの高さが理想です。(おすすめはフロント、リアが1.5、センターが1.8~2mmくらい)また、センターの高さでハーフトーンのニュアンスが変わることもポイントです。
すべての確認作業が終わったら完成です。プロのメンテナンス作業を経たギターは弾きやすさがアップし、チューニングの安定感やピックアップごとの音量バランスも良くなりました。良い状態の楽器で練習することは上達への近道です。また、ライブ本番にベストコンディションで臨むためにもぜひ定期的にメンテナンスに出すことを習慣にしてみてはいかがでしょうか。
今回取り上げたフレーズはアコギ、エレキのどちらでも使えるものなので、エレキ編、アコギ編それぞれクリアできたらもう一方のフレーズにもチャレンジしてみよう。継続は力なり!! 1日5分、毎日続けていこう!
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