
唯一無二のサウンドで数多くの名曲・名アレンジを生み出してこられた三原善隆氏。
エレクトーンプレイヤー、作編曲家として活躍する一方で後進の育成にも力を注ぎ、多くの演奏家・クリエイターに影響を与え、常に第一線で活躍し続けてこられました。
2020年4月号より月刊エレクトーンで連載が始まった「三原善隆の弾いておきたいスタンダードアレンジ」は、時代を超えて愛され続ける洋楽スタンダード、歌謡曲などを三原氏のオリジナリティ溢れるアレンジで楽しめる人気コーナー。多くの読者に愛されてきましたが、三原氏のご逝去に伴い惜しまれつつ幕を閉じました。
このたび発売される『月刊エレクトーン Presents 三原善隆の弾いておきたいスタンダードアレンジ3』は、連載で収載されたスコアをまとめた、三原氏が最後まで筆を執り続けた、集大成ともいえる曲集の最終巻となります。
本記事では、第1巻発売当時『月刊エレクトーン2023年10月号』に掲載した三原氏のインタビューを再掲。連載時のエピソード、そして三原氏が語られた楽曲への思いをあらためてお届けします。
この曲集では、弾き手が楽な気持ちで素敵なメロディーや心地良いリズムを楽しめることを一番に考えています。
月刊エレクトーンで連載「弾いておきたいスタンダードアレンジ」が始まったのが2020年4月号。1970 ~ 80年代の名曲をエレクトーンで楽しもう、というコンセプトでした。
70~80年代に僕は井上晴夫、三羽哲郎、飛田君夫ら三氏と一緒に「FUN FUN FUN」曲集のアレンジをしていて、当時の曲もたくさん聴いていました。その記憶の中から、エレクトーンアレンジに向いていると思うものや、今のエレクトーンで演奏するとより効果的だなぁと思うものをピックアップしたり、インターネットでもかなり聴いたりして選曲しました。
多様なリズムや曲想を楽しんでもらえるように、また、月刊誌では2か月続けて似たものが並ばないようにしています。
月始めに次号で何の曲にしたいかを編集部に伝えます。編曲許諾が下りたら本腰を入れてアレンジ開始。楽譜を書く作業自体は実質2日くらいですが、エレクトーンのアレンジをする時は、楽器の音色やどんな機能を使うか、どんなアカンパニメントがハマるか並行して考えますので、楽器を触りながらの作業も入ります。
レジストレーションまで仕上げて編集部に渡すのが20日くらいで、グレード何級程度にするかとか、その他細かいデータ修正、浄書チェックのやり取り等しているうちに月末が近づいてきて、次の曲のことを考えなきゃいけなくなる。
切れ目がない…いや、一部は重なっていますよね(笑)。
原曲は70~80年代のものでも、当時のエレクトーンでアレンジするのと今のエレクトーンでアレンジするのとでは考え方を変えることもしばしば。昔のエレクトーンでは、原曲の雰囲気は保ちながらも、原曲とは違う、エレクトーンでできる伴奏形とプリセットのリズムパターンのやりくりでアレンジを組み立てました。今のエレクトーンはもちろんそれもできますし、アカンパニメントやリズムの打ち込みなどを活用して、より原曲に寄せた形で演奏することもできます。
今回のアレンジも、たまに原曲とは違う感じになっているものもありますが、エレクトーンの機能を生かして原曲のイメージを尊重したものがたくさんあります。エレクトーンでできることの幅が広がって、表現の選択肢が増えたわけですね。
エレクトーンの機能を生かすと言っても、必ずしも機能を大々的に使って豪華に演出するわけではありません。僕自身も気合いを入れて欲張ってアレンジすることもあるのですが、この曲集に関しては、各種機能には縁の下の力持ち的に働いてもらって、自然なサウンドの中で、弾き手が楽な気持ちで素敵なメロディーと綺麗なハーモニー、心地良いリズムを楽しめることを一番に考えています。
誰かに聴いてもらった時にも、豪華なサウンドが印象に残るというよりは、“いい曲だね”“素敵な演奏だね”と曲自体や演奏者の姿が聴く人に一番に伝わればいいなと思います。
その“自然なサウンド”を実現するためにも実は頑張るわけですが、それは水面下の努力ですね。
この曲集は全曲QRコードでエレクトーンの演奏音源を聴けるようにしています。若い方にとっては知らない曲も多いかもしれません。でも、知らない曲も三度聴けば知っている曲になる。ぜひ出会っていただきたい名曲ばかりで、聴いてるだけでも心地よいですね。
実は僕、このエレクトーンの演奏音源を車の運転中に気分よく聴いているんですよ(笑)。
弾いているうちに、“自分だったらこのメロディーは別の音色で歌いたいな”という欲求が出てくるのも良いことですね。ぜひそうやって音色を自分流に変えたりして、曲をどんどん自分のものにしていってください。そういう欲求が生まれるということが、エレクトーンにはとても大切なことだと思います。
読者の皆さんが応援してくださったからこそ月エレの連載も続き、こうして曲集の形でより多くの方に楽しんでいただけるようになりました。本当にありがとうございます。
月刊エレクトーン2023年10月号より
取材・文/森松慶子
プロフィール
三原 善隆
北海道出身。ネム音楽院Electone科卒業。
1975年第12回ヤマハエレクトーンコンクール全日本大会入賞。
(財)ヤマハ音楽振興会指導スタッフを経て1991年プレイヤーデビュー。以降、演奏に作編曲に、また指導活動にと多忙な日々を送る。
日本コロムビアよりオリジナルアルバム「NIGHT RIDER」「WinningCup」「Progress」等をリリース。NHK「くらしのジャーナル」テーマソング制作、ヒットナンバー「NIGHT RIDER」をはじめとするオリジナル曲、エレクトーン界の名アレンジ「君の瞳に恋してる」ほか、多くの人気作品を手掛ける。
JCAA(日本作編曲家協会)会員、洗足学園音楽大学 客員教授。
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