アンプのセッティング…それはギタリストにとって永遠の課題であり、飽くなき探究心をそそられる奥深き世界である。本講座では、練習スタジオに多く常備されているマーシャル/ローランド/フェンダーアンプのセッティング術を指南。動画もチェックして、自分だけの音作りを確立しよう!
アンプの種類は大きく分けて真空管とトランジスタの2種類!
チューブアンプは、電気信号を増幅させるパーツに真空管を使ったタイプで、自然で温かみのあるサウンドが魅力。一方でトランジスタアンプは、増幅回路にトランジスタやICを使用していて、真空管に比べて手軽かつ安価、さらに経年変化も少ないため壊れにくいという特徴を持っている。
●チューブアンプ
▲信号の増幅に真空管を使用/自然で温かみのある音色/同じワット数でも音量や音圧感が大きい。
●トランジスタアンプ
▲信号の増幅にトランジスタを使用/経年変化が少なく安価/発熱&消費電量が少ない/クセのない素直なサウンド。
ツマミの名称と役割
(例:マーシャル JCM2000)
[ POWER ]
主電源。オンにすることで真空管を温める。
[ STANDBY ]
真空管に電圧がかかり電流が流れる。このスイッチがオンになって初めて音が出せる状態に。
[ PRESENCE ]
超高音域を調節。上げることで音の輪郭が明瞭になる。
[ TREBLE ]
高音域を調節。上げ過ぎると音がキンキンしてしまうので注意。
[ MIDDLE ]
中音域を調節。音の芯が太くなりコシが出る。音抜けを重視するなら特に意識しよう。
[ BASS ]
低音域を調節。ツマミを上げるほど迫力が増すが、ベースの音域に干渉してしまうこともあるため要注意。これら各音域を総称して“イコライザー(EQ)”と言う。
[ VOLUME ]
音量を調節。モデルによってMASTERと表示されているものも。
[ GAIN ]
歪み量を調節。低めに設定するとクリーントーン、高めに設定するとドライブサウンドになる。
[ CHANNEL ]
アンプによっては1台でクリーン/歪みのチャンネルを切り替えることができ、そのチャンネル切り替えを行うためのスイッチ。そういうモデルは、チャンネルを切り替えるためのフットスイッチが付属されている場合が多い。
[ INPUT ]
シールドケーブルの入力端子。インプット以外にも、背面のパネルにセンド/リターン端子やフットスイッチ端子が設けられているモデルも多い。
イコライザーにおける“フラット”とは“真っ平ら”、つまりブースト/カットしていない状態を指す。アンプは厳密なフラットの位置は存在しておらず、モデルによってフラットの位置は大きく異なる。ここでは便宜上、EQがすべて12時方向の状態を“フラット”としている。
▲諸説あるがジャズコーラスの場合、トレブル/ミドル/ベースは5(12時方向)の状態がフラットで、マーシャルの場合はトレブル/ミドル/ベースが10(全開)の状態がフラットと言われている。プレゼンスは0の状態がフラットのものが多い。
電源の入れ方
スイッチを入れる前にボリュームはゼロが鉄則!
電源の入れ方はチューブ/トランジスタで異なるが、共通の鉄則として、故障を防ぐためにツマミはゼロの状態でスイッチオン。機種によってチャンネルごとの入力端子が異なる場合もあるため、接続には注意!
● JCM2000 の場合
パワースイッチをオン
▲電源がコンセントに差さっているかを確認したら、パワー(電源)をオンに。
スタンバイスイッチ
▲数分待って、真空管が温まった状態でスタンバイスイッチをオンにする。
●ジャズコーラスの場合
パワーをオンにするだけ!
▲トランジスタアンプは、パワーをオンにするだけ。ランプが点灯すればOK。
●ツインリバーブの場合
パワースイッチをオン
スタンバイスイッチをオン
▲手順はマーシャルと同じだが、スイッチは前面ではなく背面にあるので注意。
音量/歪み具合を決めよう
ボリュームとゲインツマミで基本となる音を決めよう!
多くのアンプ(一部除く)にはボリュームとゲインツマミが存在し、それらを調整して音量と歪み具合を決定する。クリーントーンを出したい場合はボリュームを上げてゲインは適宜、歪みサウンドを出したい場合はゲインを上げてボリュームを適宜上げよう。
クリーントーンのセッティング
▲ボリュームを上げてゲインを適宜設定。歪みにくいクリーンチャンネルなら、ゲインを上げるとハリのある音になる。
ゲインサウンドのセッティング
▲ゲインを上げ目にしてボリュームを適宜設定。ゲインを上げ過ぎると、バンドアンサンブルにおいて音が埋もれがちなので注意。
イコライザーはどう決める!?
まずはすべてのツマミをフラット(12時方向)から調整
ツマミをすべて12時の方向に設定し、それから足りない音域を増やしたり、効き過ぎている音域を削るように調整しよう。ミドルは音作りの肝で、上げることで音に芯が生まれサステインも豊かに。バンドアンサンブルにおいて音抜けも良くなる。
12時方向から上げ下げ
▲当然アンプには個体差があり、ギターとの相性でも音作りの仕方は大きく異なる。まずは12時方向から設定し、自分が理想とするサウンドを目指して調整しよう。
調整時はスピーカーの近くで
▲アンプからのサウンドは、立ち位置や耳の高さによって聴こえ方がかなり変わる。音作りをする際は、なるべくスピーカーの位置に耳の高さを近づけて行おう。
●マーシャル
1962年、イギリスにて創業。ロックミュージックの代名詞とも言えるアンプ界のトップブランドで、スタックアンプの誕生はこれまで数多の偉人たちの名演や名曲を支えてきた。
●オレンジ
1968年、イギリスにて創業。伝統のブリティッシュクランチから外観からは想像できないモダンな歪みまで、多彩なトーンで世界中のプレイヤーを魅了し続けている。
●ヤマハ
1887年創業。アコギやエレキのイメージが強いが、2011年に誕生したTHRシリーズは、高い再現性を誇るアンプモデリングや素晴らしい音質によってベストセラーに。
●ローランド
1972年創業の国産ブランド。ジャズコーラスJC-120は、ツインアンプ/スピーカーによる美しいコーラス、ギター本来の鳴りを出力するアンプとして普遍的な人気を誇る。
●ヴォックス
1957年、イギリスにて創業。59年に登場したAC30は、“トップブースト”と呼ばれる独自の回路を設けることで、ブリティッシュサウンドを象徴するトーンを確立した。
●ハイワット
イギリスにて創業。1960年代のロックシーンを支えたクラシックブリティッシュアンプで、名機DR103はピート・タウンゼントなど世界的なギタリストが愛用している。
●フェンダー
1945年、アメリカにて創業。40年代からアンプを製造しており、ベースマン/チャンプ/ツイン/デラックスなど、後続のブランドに多大な影響を与える名機を数多く発売。
●ヒュース&ケトナー
1983年、ドイツにて創業。多チャンネルアンプの草分け的存在で、ピュアなクリーンからモダンなハイゲインまで、輪郭のあるサウンドが特徴。ブルーのパネルも印象的!
●ライン6
1996年、アメリカにて創業。アンプ1台でさまざまな名機の音色を出力するモデリングアンプのパイオニアで、エフェクターを含め革新的な製品を生み出し続けている。
●マーシャル JCM2000のセッティング
クラシック(チャンネルA)/ウルトラゲイン(チャンネルB)の2チャンネル仕様で、Aにはクリーン/クランチ、Bにはリード1/リード2の切り替えスイッチがあるため、計4種類のサウンドが出力可能。他にも、低音域をブーストさせるディープスイッチ、中音域をカットするトーンスイッチも装備!
クリーントーン CLEAN TONE
▲クリーンはチャンネルAで。シングルコイルは高音域が豊かなので、トレブルを0に。
▲ゲインを上げることで音にコシを出しつつ、ハムはローが出やすいので程良くカット。
クランチ CRUNCH
▲チャンネルAでクランチスイッチをオン。プレゼンスも若干抑えめにしている
▲こちらもクランチスイッチをオン。きらびやかさを出すためにトレブルを少し上げている
ゲインサウンド GAIN SOUND
▲チャンネルBのリード1。ベースを上げて音に迫力を持たせている
▲チャンネルBのリード2。ゲインは控え目でコード感を出している
●ローランド ジャズコーラスJC-120のセッティング
あらゆるライブハウスやスタジオに置かれている通称“ ジャズコ”。インプットはハイ/ローの2つあり、ギターの出力が高いものはロー、低いものはハイに接続。通常はハイに接続しよう。
クリーントーン
▲ディストーションをカチッと入れるとハリが出る。シングルでのカッティングプレイは、音がふくらまないようミドルを少し下げる
●フェンダー ツインリバーブのセッティング
ゲインツマミがないため、歪ませるにはボリュームを上げなくてはならない(しかしそこまで歪まない)。スピーカーは12インチ╳2発。クリーンが美しく、エフェクターの乗りも良好だ。
クリーントーン
▲両方とも右側のチャンネルのインプット1に接続し、BRIスイッチはオフ。低音がよく出るので、ベースを少しカット。
アンプで歪ませる場合、注意したいのが空間系や残響系エフェクターの接続方法。センド/リターン端子を経由してエフェクターを接続することで、エフェクト効果を損なうことなくキレイに歪みをかけることができる。センドからエフェクターのインプット、エフェクターのアウトプットからリターンへと接続。知っておくと便利!
▲コーラスや空間系のエフェクターのあとに歪みがかかると、エフェクト効果も歪んでしまい本来の効果が得られない。歪みを作るプリアンプの後にエフェクターを接続することで、この問題を解決することができる。
(Go!Go! GUITAR 2017年3月号に掲載した内容を再編集したものです)
Edit:溝口元海
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