音楽の世界に足を踏み入れるにあたり、最初のステップは楽譜の読み方を理解することです。楽譜は音楽の言語であり、その記号や表現は演奏者が楽曲を理解し、表現をする手助けをしてくれます。
本シリーズでは、初めて楽譜に触れる方にも、既に演奏経験のある方にもわかりやすいよう、音符やリズム、様々な記号や用語に焦点を当て楽譜の読み方を解説していきます。
第5回は、音符のつながりや演奏方法を示す音楽記号「タイ」と「スラー」、「スタッカート」と「テヌート」について説明します。
タイ(tie)、スラー(slur)
どちらも音符を線で結び付けている音楽記号。でも意味は全然違います。見分け方は【同じ高さの音をつないでいるかどうか】を見てみましょう。
同じ音をつないでいる場合は(タイ)、違う音をつないでいる場合は(スラー)となります。
タイ
(タイ)は弧線でつながれた音符をひとつの音として演奏します。したがって下図のような譜面があったとすると8分音符ではなく4分音符として演奏してくださいという意味になります。
それならば、初めから演奏する音符の長さで書けばいいのではないか?と思うかもしれません。
しかし、(タイ)をすべて通常の長さの音符で表記されると、リズムがわかりにくい譜面になってしまうのです。
下の譜面は、両方とも同じ音符を現しています。
左の楽譜は(タイ)を使わず通常の長さの音符で表記し、右の楽譜は(タイ)を使って表記しています。ぱっと見たときに、右の譜面のほうがリズムがわかりやすくなっていますね!
また、それ以外にも、(タイ)を使うことによって通常の音符では表現できない長さの音符を作ることができます。音符で一番長い音符は全音符ですが、2小節ぐらい同じ音を鳴らし続けたい場合、全音符では表記することができません。そこで(タイ)を使って音をつなげてあげることにより2小節の音符を作ることができます。
スラー
(スラー)は高さの違う複数の音符にある弧線で、「この記号のつけられた範囲の音符は音と音の間を滑らかに演奏する」という演奏方法です。
このように演奏方法になりますので、滑らかに演奏するということだけでなく、フレーズのひとくくりや、メロディの区切りとしても表記されることがあります。
したがって、(タイ)が書かれた場所にさらに(スラー)が表記されるという事も当然ありえます。
▼まとめ
(音の長さは「タイ」、演奏方法は「スラー」と覚えておきましょう!
同じ音をつないでいるのは(タイ) ・・・ 音の長さ
違う音をつないでいるのは(スラー) ・・・ 演奏方法
スタッカート(staccato、stacc.)、テヌート(tenuto、ten.)
音符の上または下についている小さな印で、どちらも音符の特定の部分を強調したり、その演奏方法を指示する音楽記号。
音符の上または下に点がついている場合は(スタッカート)、線がついている場合は(テヌート)です。
スタッカート
(スタッカート)は、音を短く切って演奏します。
イメージとしては、楽譜には書かれていない休符が、記号のついた音符の後に入る感じです。記号のついた元の音符の長さの半分くらいに短く切って演奏するのが定番ですが、曲のテンポや雰囲気によって自由に解釈できます。
スタッカートはリズムがポイント。音符を強調するだけでなく、軽快で活気のある演奏を促す効果もあるため、ロックやHip Hopはもちろん、サンバやレゲエ、スカにも多用されています。クラシックではピチカートが典型的な例です。
テヌート
(テヌート)は、音の長さを十分に伸ばして演奏します。
「十分に」とは、その音符を拍数分ギリギリまで保って演奏するということですが、この説明だけではテヌートの有無による演奏方法の違いが明確ではありませんね。テヌートが付いている音符では、音を長く保ち、さらにしっかりと強調して鮮明に演奏することでその音符に特別な意味を与えてください。
イメージとしては様々ありますが、私の学生時代の声楽レッスンでは「しっかりと歌う」「もっと大切な感じで」「少し大げさに」とアドバイスを受けました。また、テヌートといえば ラフマニノフ が思い浮かびますので、ラフマニノフの作品を聴きながら表現のイメージをつかむのもいいかもしれません。
▼まとめ
点は(スタッカート)、線は(テヌート)、どちらも演奏方法です!
音符の上または下についた
【点】は(スタッカート) ・・・ 演奏方法 「音を短く切って演奏する」
【線】は(テヌート) ・・・ 演奏方法 「音の長さを十分に保って演奏する」
全体のまとめ
楽譜には様々な音楽記号がありますので、積極的に覚えていくことで演奏がよりスムーズに、表現がより豊かになります。ぜひ一緒に学んでいきましょう!
次回は「リピート記号、1番カッコ、2番カッコ」について解説します。
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