フレックス編成の「ビルド・ア・バンド・シリーズ」に含まれる１ 曲。このシリーズの他の作品と同様、旧作を書き直したものだが、1993年に出版されたこの曲のオリジナルは当時きわめて高く評価された。その秀作がフレックス編成版で復活したのは喜ばしい。


　「ウェスト・ハイランド」はイングランド西部の高原地帯。この曲はシェルドンがイングランドやウェールズを旅した時の印象を、その地方の民謡を素材に３つの楽章からなる組曲にまとめたものである。


　I. 〈高原にて〉Stow-On-The-Wold: 2/4拍子の素朴で軽快な舞曲。


　II.〈 ブラッドフォードのバラード〉Bradford Ballade : ゆっくりと 優しく歌われる美しい旋律が、後半ではドラマティックに高揚する。ブラッドフォードはイングランド北部、ウェスト・ヨークシャー州の都市。


　III. 〈ダーウェントウォーターにて〉On Derwentwater: 6/8拍子の 活気溢れる舞曲。Fの音の刻みがオスティナートとしてさまざまな楽器に受け渡される。ダーウェントウォーターはイングランド北西部の観光地レイク・ディストリクトにある湖のひとつ。


　シェルドンらしい美しく洗練されたサウンドが生かされ、全体に上品で古典的な味わい。やはりイギリスの民謡を素材としたヴォーン・ウィリアムズやグレインジャーの作品に似た趣がある。音楽構成は非常に巧みで、全く無駄な音、無駄な場面がなく、アーティキュレーションの周到な指示にも感心させられる。インパクトのある曲ばかりに目が向きがちだが、このような音楽表現と奏法の基本を生かせるような作品にぜひ取り組みたい。

(解説: 後藤洋) SHELDON, RobertWest Highlands Sojourn: Score & PartsC. L. Barnhouse Co.