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ショパンの楽譜、どの版を選べばいいの? ――エディションの違いで読み解くショパンの音楽

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ショパンの楽譜、どの版を選べばいいの? ――エディションの違いで読み解くショパンの音楽

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みなさんはショパンの作品を弾いているとき、楽譜に書かれている音などがエディション(版)によって違っていて困った、という経験をしたことはありませんか?

ショパンの作品は、世界中のピアニストによって演奏されるだけでなく、ピアノ教育の必修曲ともいわれるほどです。そのため、さまざまな出版社から、数多くの楽譜が出版されています。

出版されている楽譜は、出版社によってそれぞれ個性があります。そして同じ作品の楽譜でも、校訂者や出版社が違うと必ずどこかに違いがあり、音の高さそのものが異なっていることもしばしばあります。

ショパンの場合、エディションごとの違いがほかの作曲家に比べてとりわけ顕著であるという事情があります。本書ではこうした事情を踏まえ、どのようにショパンの楽譜に向き合い、実際の演奏に生かしていくのがよいか、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。本書を読み終えたあとには、きっと迷わずショパンのエディションを選べるようになっているはずです。――本文より抜粋

[目次]
はじめに

第1章 ショパンの楽譜 ――なぜエディションによって違いがあるの?

・3つの理由から違いは生じる
・遺作と作品番号に注意しよう
・親友に裏切られた!?
・整理番号って何?

[コラム1]楽譜は進化する

第2章 楽譜の基礎知識 ――作曲家と校訂者の意識を探ってみよう

・細かい指示が書かれていない!? ─ 18 世紀の楽譜
・改良こそ校訂者の仕事である─ 19 世紀の楽譜
・作曲家の意図を反映させる─ 20 世紀の楽譜
・そもそも「原典版」って何?
・「作曲家の最終的な意図」をめぐる論争
・すべての作品に通用する校訂方法はない
・原典版はひとつではない─資料批判とテクスト批判
・エディションを比較してみよう─バッハの作品を例に
・原典版か解釈版か
・楽譜は具体的になっていく
・校訂方針はエディションごとに異なる

[コラム2]写譜家について

第3章 ショパンの特殊事情 ――校訂の難しさとエディションの種類を知る

・ショパンのエディション作りはここが難しい
・作品と資料はどちらが優先される?
・ショパンのエディションは何種類あるの?
・各エディションの系統、および付加と改変をみてみよう
・邦訳エディション、およびおもな国内版は?
・出版されている原典版と全集版、今後の出版は?
・本書でおもに取り上げるエディションについて

[コラム3]新ヘンレ原典版

第4章 あふれる楽想 ――ヴァリアントから自由を読み解く 《ノクターン 第2番 op.9-2》

・ヴァリアントはこんなにたくさん書かれていた
・なるべく多くのヴァリアントを!
・エキエルの独断?
・ショパンは自由な人だった?
・自由にヴァリアントを選ぼう

[コラム4]エキエルの功績

第5章 真の作品 ――異なる音から本当の意図を探る 《エチュード op.10-3》

・自筆譜の音は違っていた!?
・音の違いにみんなびっくり
・音はいつ変わった?
・演奏習慣か校訂上の正しさか
・自筆譜の速度標語も違っていた!?
・ショパンのなかの変化をどう解釈するか
・「別れの曲」と呼ぶのは日本だけ
・ショパンは標題をつけない
・標題はイメージをかきたてる
・名曲は独り歩きする

[コラム5]スターリングの楽譜への書き込み

第6章 記譜の統一 ――異名同音から豊かな響きを想像する 《バラード 第1 番 op.23》

・異名同音が混ざっている!
・19 世紀後期の和声理論?
・理想が同じでも結果は異なる
・ショパンの考えを推測する
・好みの響きを選ぼう

[コラム6]出版社が勝手につけた標題
[コラム7]ウェッセル社によってつけられた標題

第7章 3つの初版 ――初版が原因で生じたエディションによる違いを考える 《プレリュード 第2番 op.28-2》

・符尾のつけ方が違っている!
・記譜法の統一?
・拍子記号も違っている!
・このように3つの初版は作られた
・初版による違いをどう読み解くか

[コラム8]プレリュードの周辺
[コラム9]プレイエル・ピアノ

第8章 記譜法と演奏法 ――付点のリズムを弾くときは? 《プレリュード 第9 番 op.28-9》

・ずらすかそろえるか
・バロック時代の習慣は?
・エキエル版はそろえている
・パデレフスキ版はずらしている
・そろえる記譜はセンセーショナルだった!?
・レッスン中の書き込みからわかること
・演奏も資料になる
・第8小節1拍めの8分音符を弾くときは?
・音価に関わる問題だから難しい
・主体的な選択を心がけよう

[コラム10]ペダル
[コラム11]指づかい

第9章 原典版と解釈版 ――アーティキュレーションがこんなに違う? 《タランテラ op.43》

・エキエル版とコルトー版の違いは多い
・校訂報告が書かれていない!
・左手はどう弾けばよい?
・短いスラーは1880 年頃現れた
・楽譜に躍動を感じる
・どちらを選ぶか

[コラム12]奏法の工夫

第10章 遺作 ――2種類あることを知っておこう 《幻想即興曲 op.66》《レント・コン・グラン・エスプレッシォーネ》

――《幻想即興曲 op.66》
・自筆譜はふたつあった
・自筆譜はそれぞれここが違う
・ショパンはなぜ出版しなかったか
・オリジナル版とフォンタナ版のその後
――《レント・コン・グラン・エスプレッシォーネ》
・片方の自筆譜だけが出版された
・パデレフスキ版とエキエル版ではここが違う
・遺作に向き合うときに

[コラム13]祖国に眠るショパンの心臓

第11章 ショパンの楽譜、どの版を使っていますか? ――エディション受容の調査からみえること

・調査の内容について
・エディションの認知度
・エディションの使用度
・エディションを選ぶ理由
・まとめ

[コラム14]ショパン国際ピアノコンクール

おわりに

ショパンの楽譜に関するFAQ
[巻末資料1] ショパンによる書き込みがある楽譜
[巻末資料2] ショパンの遺作一覧(WN 整理番号対照表)
[巻末資料3] ショパンの死後に出版された《バラード 第4 番》のエディション
 参考文献

■著者について
岡部 玲子(おかべ れいこ)
常磐大学人間科学部教授。お茶の水女子大学ピアノ専攻卒、同大学院修士課程ピアノ専攻および博士課程修了、ショパンのエディション研究にて博士号取得、博士(学術)。ピアノを故遠藤秀一郎、山田富士子、室内楽を瀬戸瑤子、音楽学を故大宮眞琴、徳丸吉彦の各氏に師事。茨城県芸術祭特賞。コンセール・アミ奨励賞。リサイタル、協奏曲、室内楽等の演奏活動の他、ショパンに関する執筆多数。各種ピアノコンクール審査員。

商品詳細

商品番号 GTB01090097
発売日 2015/9/17
仕様 A5判縦/192頁
サイズ A5
ページ数 192
JAN 4947817243793
ISBN 9784636900972
楽器 書籍
著者 岡部 玲子