作曲:田中達也
作詩:水無田気流
A4判／56頁
グレード:中級～上級
演奏時間=約21分
ISBN 978-4-7609-1887-4

2014年8月30日に紀尾井ホールで開催されたThe Premiere vol.3でなにわコラリアーズ（伊東恵司指揮）によって初演された作品。
社会学者でもある詩人のどこか非現実的な言葉の中にリアリティを見出し、時にはエネルギッシュに、またメロディックに、そしていささか過激なリズムなど、男声合唱の魅力を余すところ無く体感できる組曲。

〈初演情報〉
委 嘱：カワイ出版
指 揮：伊東恵司
ピアノ：水戸見弥子
合 唱：なにわコラリアーズ

＜まえがき＞
水無田気流（みなしたきりう）さんの詩集「音速平和」から5篇の詩を選んで作曲しました。学生の頃から合唱の近くに身を置いていたため、とりわけ「合唱曲を書く」ということに対しては思いを持って取り組んできましたが、男声合唱の作品は他の編成ほど多くはありませんでした。近年、男声合唱のために作品を書く機会が少しずつ増えてきたところに、カワイ出版より新作のお話を頂き、改めて「作曲における同時代性」を意識しながら書き上げたのがこの作品です。
水無田さんは「現時点での世界の強度と速度を正確に映し出すこと」と、詩集の目標をあとがきに示しています。作曲の過程においては、詩句そのものを超えたところにある、テキストから見える情景や空気感と真摯に向かい合い、また、それらを表現に結びつけるとき、さまざまなスタイルを取りながらも音楽作品としての「かたち」を明確に表出すること、がテーマとして立ちのぼってきました。そこから、男声合唱という形態にふさわしいテキストと音を・・・と模索していった結果、合唱パートの大部分は2段譜の4部合唱という比較的シンプルな譜面に落ち着いています。
詩人はさらに「・・・タイトルに『平和』と冠したのは、シニスムであると同時に希望である。今日、希望はいっそう絶望よりも重く、矛盾に満ちていることを配視しつつ。」と、詩集のあとがきを締めくくっています。「平和」という言葉が近くも遠くもある現代。この作品が、同時代や次の時代に横たわる諸々と渡り合っている人々の希望を掘り起こすきっかけになれば、と思います。そして、さまざまな世代・形態の合唱団による演奏がなされることを期待します。

田中達也