プログラムノート: 機会があって《木星のファンタジー》《火星のマーチ》と、G.ホルストの管弦楽組曲《惑星》の各曲のモチーフをベースとした作品を書いたことがあった。そこで、今度は、いわば「贋作『惑星』」とでもいった組曲を作ってみようと思い立った。それにしてもホルストは、「地球」という曲を作っていない。そんな折、アメリカはコロラド州のロッキーマウンテン高校のケイシー・クロップ氏から吹奏楽作品の作曲の話を受け、この「地球」の作曲と相成った。これは、去る5月7日、私自身の指揮で初演。 それにしてもこのところの地球は、あまり穏やかではない。地上では戦争やテロが絶えないし、地面の下でも、大きな地震が相次いでいる。そこで「地上の平和」という言葉を思いついた。これをドイツ語で「Friede auf Erden」というのだが、これはフェルディナンド・マイヤーの詩によるシェーンベルク初期の、大変に美しい無伴奏合唱曲の題名だ。私の大好きな作品なのだが、この詩を用いて私もシンプルなメロディを1つ書き、そのメロディを展開させるという作品に仕上がった。 そして曲の最後には、「Agnus Dei」(神の子羊)という作曲者不詳の美しいメロディをオーボエが歌う。このよく知られたラテン語の歌詞は、「Dona nobis pacem」(我らに平和を与えたまえ)。したがってこの「地球」は、平和への祈り、とでもいった作品となった。(日本初演プログラム/伊藤康英)