スタイルノート
中東世界の音楽文化 うまれかわる伝統
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内容紹介 今日、イスラム文化圏に属する中東世界は人類最古の文明発祥地をかかえ、世界の音楽文化の根源と基底をかたちづくってきた。音楽文化はこの中東から人類史を通じて東西の世界に拡散していったとも言える。「西洋文明の源流は中東にある」としばしばいわれるが、本書では、その音楽文化が、中東と西洋を舞台に互いに越境しあい、縦横に行き来し、展開し、深化しつづけている実態を分析し論じている。フィールドワーカーである著者達による現地での生の音楽の体験・記録・分析が、中心となった論文集で、中東世界(諸国)の音楽文化の伝統の現状を、たんねんな現地調査・体験をとおして縦横に論じている。それぞれの論文は、民族音楽学、文化人類学の視点をふまえながら、中東世界の音楽文化を、斬新な切り口と手法で観察・体験・分析。中東世界の音楽文化の、不断にうまれかわっていく伝統の一端を、ここでは、「繋ぐ」、「継ぐ」、「紡ぐ」、「創る」という新たな4種の切り口で詳述している。論文集ではあるが、誰にでも読みやすく書かれており、特に冒頭の基礎解説と最後の座談では平易に理解できるように全体の内容が解説されており、中東世界の音楽の入門書としても十分活用できる。 目次 まえがき(西尾哲夫・水野信男) 本書を理解するための序章(水野信男) I 伝統を繋ぐ ー大衆音楽という公共空間ー 1 歌に読み込まれた「千夜一夜」 ーウンム・クルスームのレパートリーにみる(水野信男) 2 イランにおける「ポピュラー」音楽の変遷 ー高尚/低俗の二項対立を超えて(椿原敦子) 3 ベリーダンサーは何を表現しようとしているのか? ー舞踊における意味の深みへ(西尾哲夫) 2 伝統を継ぐ ー共鳴する個性ー 4 サントゥール演奏の新しい身体性 ー「楽器盤面の地政学」へ向けて(谷正人) 5 東アラブ地域における”古典器楽”の成立 ー音楽家サーミー・アッシャウワーの功績(酒井絵美) 3 伝統を紡ぐ ー包摂する感性ー 6 パリで故郷の歌を聴く ーモロッコ・スース地方出身の人びと(堀内正樹) 7 眩惑の反復 ーあるベルベル吟遊詩人の曲を巡って(小田淳一) 4 伝統を創る ー民族音楽学という音楽空間ー 8 小泉文夫が伝えた中東の音楽 (斎藤完) 9 チュニジア「ラシディーヤ」伝統音楽研究所 ー歴史と現在(松田嘉子) 10 中東少数派の自己認識 ーあるシリア正教徒の音楽史観と名称問題(飯野りさ) 資料1 国民国家の中の伝統音楽 ーオマーンの事例から(樋口美治) 資料2 ラウンドテーブル 「交錯する芸術 ー中東と西洋ー」1 「交錯する芸術 ー中東と西洋ー」2 あとがき(西尾哲夫・水野信男) ひとこと 本書は「繋ぐ」、「継ぐ」、「紡ぐ」、「創る」という4つのキーワードから中東の音楽文化を分析しています。中東世界の音楽文化を新たな切り口で分析し体験することに成功した成果がまとめられているのです。新たな価値を創出しながら、人びとが生きる実践につながっているということ、つまり中東世界の音楽文化のまさに現代の状況について、現地で実際にその音楽や人々に接しながら収集した情報をもとにして研究した成果がまとめられています。 音楽の伝統は、不断に変容しつづけています。伝統とは、時代と地域で固定化することはありません。時代や地域を常に越境し旅し続けるのが音楽です。いわば、インターアーツとも言えるでしょう。「音楽に国境はない」と言われますが、実際にそれはどういうことなのか、現実にどうなっているのかを本書は掘り下げます。民族音楽と伝統音楽と芸術音楽の間に境界線はあるのか。民族音楽学と文化人類学がとらえた音楽のかたちが生き生きと描かれています。 こうした現場で得られた知見をもとにした研究成果がまとめられているわけですが、いずれもわかりやすく書かれた論文です。また、本書冒頭には、中東世界における音楽伝統がいかに成立してきたのか、西暦600年頃のベドウィンの伝承歌から現代のアラブ音楽に至るまで、平易に解説されています。この「本書を理解するための序章」を読むことで、論文を読むための基礎知識を得ることができるでしょう。さらに、最後に2回の座談会を収載してあり、各論文を総合的に見ることや理解を深める一助となっています。中東世界の音楽文化を知るための基本文献として大いに役立つことでしょう。 著者プロフィール 西尾 哲夫(ニシオ テツオ) 国立民族学博物館副館長 人間文化研究機構国立民族学博物館教授/総合研究大学院大学文化科学研究科教授 言語人類学 最終学歴:京都大学大学院文学研究科博士課程修了 学位:博士(文学) 主要業績:「枠物語異聞?もうひとつのアラビアンナイト、ヴェツシュタイン写本試論」堀内正樹・西尾哲夫(編)『〈断〉と〈続〉の中東?非境界的世界をぐ』悠書館 2015。『ヴェニスの商人の異人論?人肉一ポンドと他者認識の民族学』みすず書房 2013。『世界史の中のアラビアンナイト』(NHKブックス)NHK出版 2011。 水野 信男(ミズノ ノブオ) 兵庫教育大学名誉教授 民族音楽学 最終学歴:東京藝術大学大学院音楽研究科音楽学専攻修士課程修了 学位:博士(文学) 主要業績:『音楽のアラベスク─ウンム・クルスームの歌のかたち』世界思想社 2004。(編著)『民族音楽学の課題と方法─音楽研究の未来をさぐる』世界思想社 2002。『ユダヤ音楽の歴史と現代』アカデミア・ミュージック 1997。 飯野 りさ(イイノ リサ) 日本学術振興会特別研究員(PD)地域文化研究(音楽) 最終学歴:東京大学大学院総合文化研究科単位修得満期退学 学位:博士(学術) 主要業績:「『タラブ』と『ナガム』の文化内在的構造:アラブ文化における音楽と情緒の関係に着目して」『イスラム世界』82、2015。 “Inheriting the Ghammaz-Oriented Tradition: d’Erlanger and Aleppine Maqam Practice Observed.” Ethnomusicology Forum. 18(2), 2009。 小田 淳一(オダ ジュンイチ) 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授 計量文献学 最終学歴:筑波大学大学院文芸・言語研究科各国文学専攻博士課程単位取得退学 学位:文学修士 主要業績:「孤高の楽師?『数』を偏愛するベルベル吟遊詩人」堀内正樹・西尾哲夫(編)『〈断〉と〈続〉の中東?非境界的世界をぐ』悠書館 2015。『セーシェルの民話2』、『コモロ諸島の民話1・2』東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 2015。 斎藤 完(サイトウ ミツル) 山口大学教育学部准教授 民族音楽学 最終学歴:東京藝術大学大学院音楽研究科博士後期課程単位取得退学 学位:修士(音楽) 主要業績:「ウズベキスタン共和国における伝統文化の保護:ユネスコ無形文化遺産・ナウルーズの事例を中心に」『山口大学研究論叢第3部』65、2015。「古典トルコ音楽とは何か」西尾哲夫・堀内正樹・水野信男(編)『アラブの音文化─グローバル・コミュニケーションへのいざない』スタイルノート 2010。「近現代における“かの地”の音楽?オスマン帝国、そしてトルコ共和国」片山杜秀(編)『ラチオ 思想としての音楽』講談社 2010。 酒井 絵美(サカイ エミ) 東京藝術大学演奏藝術センター教育研究助手 民族音楽学 ヴァイオリン奏者 最終学歴:東京藝術大学大学院音楽研究科音楽文化学専攻修士課程修了 学位:修士(音楽) 谷 正人(タニ マサト) 神戸大学大学院人間発達環境学研究科表現系講座准教授 民族音楽学 最終学歴:大阪大学大学院文学研究科文化表現論専攻音楽学講座博士後期課程修了 学位:博士(文学) 主要業績:「聴こえるものと見えるもの」「音組織(音階)」徳丸吉彦(監)増野亜子 (編)『民族音楽学12の視点』音楽之友社 2016。“Verbal Rhythm and Musical Rhythm: A Case Study of Iranian Traditional Music.” Nagasaki, Hiroko(ed.) Indian and Persian Prosody and Recitation. Saujanya Books. Delhi 2012。『イラン音楽?声の文化と即興』青土社 2007。 椿原 敦子(ツバキハラ アツコ) 龍谷大学社会学部専任講師 文化人類学 最終学歴:大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了 学位:博士(人間学) 主要業績:「在外イラン人コミュニティにおけるイラン映画:『イラン映画』と『イラン系映画』の交錯をめぐって」貫井万里・杉山隆一(編)『革命後イランにおける映画と社会』早稲田大学イスラーム地域研究機構 2014。“Putting ‘Tehrangeles’ on a Map: A Consideration of Space and Place for Migrants.” Bulletin of the National Museum of Ethnology. 37(3), 2013. 樋口 美治(ヒグチ ヨシハル) 民族音楽学 最終学歴:成蹊大学文学部卒 主要業績:「都市に伝わる歌唱形式『イラキマカーム』」西尾哲夫・堀内正樹・水野信男(編)『アラブの音文化─グローバル・コミュニケーションへのいざない』スタイルノート 2010。「独自の音楽世界」アジア読本『アラブ』河出書房新社 1998。 堀内 正樹(ホリウチ マサキ) 成蹊大学文学部教授 社会人類学 最終学歴:東京都立大学大学院社会科学研究科社会人類学専攻博士課程単位取得満期退学 学位:文学修士 主要業績:「小さなメロディーが開く世界─モロッコ」堀内正樹・西尾哲夫(編)『〈断〉と〈続〉の中東─非境界的世界をぐ』悠書館 2015。「世界のつながり方に関する覚え書き」『成蹊大学文学部紀要』49、2014。「アンダルシア音楽のしくみ」西尾哲夫・堀内正樹・水野信男(編)『アラブの音文化─グローバル・コミュニケーションへのいざない』スタイルノート 2010。 松田 嘉子(マツダ ヨシコ) 多摩美術大学美術学部教授 ウード奏者 ル・クラブ・バシュラフ主宰 最終学歴:国際基督教大学大学院比較文化研究科博士後期課程満期退学 学位:文学修士 主要業績:「アラブ音楽とマルーフ」、「夏の音楽フェスティバル」鷹木恵子(編著)『チュニジアを知るための60章』明石書店 2010。「アラブ音楽の見取り図─古典音楽」関口義人(編)『アラブ・ミュージック─その深遠なる魅力に迫る』東京堂出版 2008。サラーフ・アル・マハディ著・松田嘉子訳『アラブ音楽』Pastorale出版 1998。
商品詳細
発売日
2016/9/28
ページ数
384
ISBN
9784799801543
楽器
書籍
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