一麦出版社(日キ販)

音楽療法入門 理論と実践【第3版】第1巻

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音楽療法入門 理論と実践【第3版】第1巻

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これまで取り挙げられていなかった項目分野が新たに加えられ第2版までの内容にも大幅に変更が施されている。第3版は、まったく新しい書物である。

音楽療法先進国アメリカの「標準教科書」。音楽療法活動に絶対必要な知識と技術を網羅。索引が充実しており辞典として活用できる。

日本初の音楽教育学博士(カンザス大学.1993年)、栗林文雄特任教授による翻訳

音楽療法士資格試験 受験生必読の教科書


栗林文雄教授により翻訳された本書は、アメリカでの最も優れた専門家による音楽療法入門書であり、世界的に高く評価を得ている本でもあります。日本において音楽療法の学習を志す人々に対して、本書は、よき入門テキストとして広く読まれることが強く期待されます。


日本音楽療法学会理事長 日野原重明


全3巻 刊行予定
第2巻 2015年6月
第3巻 2015年8月

謝辞
第3版への序

第I部 音楽療法の概要

第1章 音楽療法の臨床実践
 音楽療法とは何か
 音楽療法の対象者
 音楽療法士の職場
 音楽療法士の個人的資質
 音楽療法士の育成
 職業としての音楽療法

第2章 音楽療法 その歴史的視点
 文字をもたない時代の音楽療法
 文明化初期の音楽と癒し
 古代文明における音楽の使用―癒しの儀式
 中世,ルネサンス時代の音楽と癒し
 アメリカにおける音楽療法の発達
  18世紀の文献にみる音楽療法
  19世紀の文献にみる音楽療法
  19世紀の教育施設における音楽療法
  20世紀初頭の音楽療法
 専門的職業としての音楽療法の発達


第3章 音楽 人間独特の現象であり治療の手段となるもの
 音楽的存在としての人間
 生涯にわたっての活動,音楽
  児童の音楽的発達
  青年期と音楽
  成人と音楽
 音楽は多様で柔軟な芸術様式である
  形式,構造の特徴とかかわり方
 音楽の機能
 機能的領域
  生理的機能
  音楽と認知
  コミュニケーションとしての音楽
  音楽と情緒
  音楽と文化,社会


第II部 音楽療法の対象者

第4章 知的障がいをもつ児童,成人と音楽療法
 歴史的な概観
 知的障がい(Intellectual disabilities)の概念と定義
 現在の知的障がいの定義と関連した重要な要素―五つの前提
 知的障がいの程度と区分
  軽度の知的障がい
  中度の知的障がい
  重度,最重度の知的障がい
  測定不能
 知的障がいの原因
 知的障がいの予防
  一次的予防
  二次的予防
  三次的予防
 知的障がいをもつ人々の発達的経過
  認知的発達
  言語発達
  身体的,運動機能の発達
  社会性と情緒の特徴
 知的障がいをもつ人々への教育的配置
 知的障がいをもつ人々への教育的技法
 知的障がいをもつ人々への音楽療法
 知的障がいをもつ人々への音楽療法の活動目標
  社会的,情緒的行動の発達を促す音楽療法
  運動機能の発達を促す音楽療法
  コミュニケーションスキルの発達を促す音楽療法
  就学前技能の発達を促す音楽療法
  学習能力の発達を促す音楽療法
  レジャー(余暇)技術の発達を促す音楽療法

第5章 自閉症児と自閉症スペクトラム障害(ASD)
 定義と診断
 病因論
 特徴
  コミュニケーション
  社会的交流
  感覚処理
  行動特徴
 音楽療法の目的と介入
  コミュニケーションスキルを高めるための音楽療法
  社会的,情緒的能力を高めるための音楽療法
  行動を改善するための音楽療法
  学習能力,身体/運動能力,余暇技術を高めるための音楽療法

訳者あとがき


●第3版への序 ――――――――――――――――――――

 『音楽療法入門―理論と実践』の三度にわたる改訂は,その構造と内容において過去15年間の音楽療法領域の進化を映し出している.1992年に出版された第1版の主要な目的は,音楽療法コースに学ぶ学生のために音楽療法という領域全体を概観することに置かれていた.1999年,2回めの改訂は,以前の流れをそのままに,当時として最新の理論や研究結果を含めて情報を刷新したのであった .

 本書第3版は,第1版,第2版と同様に,21世紀に入って以後生じた新しい概念と知識を網羅している .しかし,この新版においては,近年の音楽療法領域における研究と臨床の増大と成長を反映し,相当大きなな再概念化と組織化を行った.その第一の特徴は担当著者の人数が増えていることである .この新しい形式はおそらくパイオニアであるE. Thayer Gastonの編纂による古典的な教科書である『Music in Therapy』(1668)を読者に連想させるであろう.その内容はそれぞれの専門分野の実践と研究について複数の著者によって分担し書かれている.同様に,新しく加わった第3版の著者はそれぞれの領域において長年にわたり臨床経験をつみ,さらに最新の研究結果と臨床技術に詳しい最高の臨床家たちである.その内容の濃さは各章に反映されている.新しい著者の加入により,展望の幅が広がり,音楽療法の周辺領域に関連する専門知識において深い知識を提供することができた.

 本書の第二の改訂点はホスピスケアにおける音楽療法に一つの章をさいたことである.第2版の出版から時が経過するなかで不治の病をもつ患者に対する音楽療法の使用が急激に発達した.新しく議論を広げることが必要な領域である.

 第三の改訂点は臨床実践についての章を拡大したことである.そこでは現代の音楽療法の分野で使用される,顕著な理論あるいは方法論的アプローチの基礎的な概観が説明されている.

 本書は音楽療法を専攻する学生のために書かれた教科書であるとはいえ,障がい者援助論,臨床演習,研究法など,他の学部の音楽療法関連クラスの入門書としても活用できる内容をもっている.さらに,本書は他の音楽療法臨床領域をさらに知りたい場合や,新しい知識や技法などに興味のある人々,そして音楽療法士資格試験を受験する学生たちにとっても,利用価値のある本であるといえよう.

 近年,障がいをもつ児童や成人に必要とされる多様なニーズに対する組織的対応が,医療教育現場に働く人々の共通の課題となっている.必然的に,その中で働く専門家には他領域の治療教育的技法についての知識をもつことが重要となってくる.本書は特殊教育,医学,看護,作業療法,理学療法,心理学,レクリエーション療法,カウンセリング,老人学,ソーシャルワーク,人間発達学などに関係する,広い意味での医療福祉関係の専門家と学生のための音楽療法の入門書でもある.

 この第3版の執筆目的を具体的に挙げると以下のようになる.
 ・音楽療法という領域を明快に,しかも簡潔に説明する.ここには音楽療法の定義,音楽療法士の教育と訓練,音楽療法士が対応することになる対象者の理解,音楽療法士の就職状況などが含まれている.
 ・音楽療法領域の発達の歴史について紹介する.
 ・人間の音楽への反応についての理解を深める.
 ・音楽療法による援助の必要な人々について,その特徴と治療的ニーズを説明し,音楽療法による介入方法について解説する.
 ・紹介(referral),査定(assessment),治療計画(treatment planning),治療的介入(intervention),評価(evaluation)についての概念を説明する.
 ・音楽療法に用いられる典型的な研究法の紹介をとおして,この領域における研究の役割を説明する.
 ・音楽療法に関係する領域での医療的な法律,資格制度について説明する.
 ・音楽療法に関係する研究論文,書籍,教材などを多数紹介する.

この本の構成
 この本は(1)音楽療法の概要,(2)音楽療法の対象者,(3)音楽療法の専門的知識,という三部門からなっている.

 第I部 音楽療法の概要には音楽療法の基礎概念を説明する三つの章が含まれている.第1章では音楽療法の定義,臨床の実際とその対象者の概要を説明し,さらに,音楽療法士の教育についても紹介する.第2章においては,治療的な場面での音楽使用の歴史を学ぶ.特に19世紀から20世紀におけるアメリカでの音楽療法の発達に焦点をあてている.第3章では音楽刺激に対する人間の社会的,心理的,身体的反応について説明している.また人間と音楽現象との一般的な関係を深く学ぶことは,音楽の療法的使用の基本的な知識を増すことにつながっている.

 第II部 音楽療法の対象者は11の領域に分けて説明されていて,それぞれのもつ病気や障がいについて説明を加えている.初心者にもわかりやすく理解できるように,特別に配慮し,各章はどれも同じような構成順序になっている.最初はその障がいや病気の定義,概観的な説明があり,次に音楽療法の使用について説明する形式になっている.

 第4,5,6,7,8章では伝統的に音楽療法が頻繁に使用されている分野,発達障がい(知的障がい,自閉症スペクトラム障害),身体障がい,行動―情動の障がい,加齢関連の障がいの四つの対象領域が述べられている.さらに第9章から第14章までは音楽療法士が働くことの多い,その他の主要な対象者である学習障がい,感覚障がい,医療的疾病,脳卒中や脳損傷,さらにホスピスや刑務所などにおける音楽療法が説明されている.

 第III部 音楽療法の専門的知識についての章では,音楽療法の治療プロセスと研究活動が述べられている.第15章は前後二つの部分からなり,臨床的治療プロセスと,専門家としての責任能力について述べている.前半はアセスメントの必要性,目的と小目的を基本に設定した治療的音楽活動の重要性,治療成績の評価についてが述べられている.後半では音楽療法領域で多く使用されている著名な理論と主な技法が議論されている.最終章である第16章では音楽療法領域における研究活動が紹介されている.ここでは記述的研究,実験的研究,歴史的研究,質的研究の四つの代表的な研究法が紹介されている.加えて研究論文の効果的な読み方についての情報も網羅されている.

 以上のように,本書は職業としての音楽療法について,すべての情報をわかりやすく提供し,音楽療法の過去,現在の状況,そしてその未来をも含めて検証する.障がいをもった人々の生活を少しでも意味あるものにすることは,音楽療法士を含む多くの熟練した臨床家の最大の関心事である.しかし援助技術や知識は,障がいをもった人々の潜在能力が発揮されることを援助するうえでの一側面でしかない.音楽療法士は自身のもっている能力を信じ,各分野におけるその貢献度を高めなければならない.本書は,病や障がいをもつ人々の生活を向上するうえで必要な援助を献身的に遂行しようとする学生や専門家のために書かれたものであるといえよう.
本書の特徴

 本書『音楽療法入門―理論と実践』には,学習を効果的にするために以下のような工夫がなされている.

 各章の概要 それぞれの章の初めにその内容の概要が挙げられている.読者はそれにより章の構成や主要なトピックを簡単に知ることができる.
 図表,イラスト 本書には説明内容を補足するために,さまざまな形で図表,イラストが用いられている.

 要約 各章のまとめとして要約を挿入している.読者はこの要約により簡便にその内容を事前に知ることができる.

 学習のための質問 読者の内容の理解の程度を知るために各章に小テストが用意されている.これらの質問の解答形式は小論文・エッセイ型である.
 参考文献 さらに詳しく勉強したい読者のために,関係する書籍論文などのリストを用意した.これらは初めて研究活動を行う学生諸氏にとって,きわめて役に立つものである.

 用語解説 各章にある重要な用語は太字で印刷されている.それらの用語はアルファベット順に第3巻の巻末に解説されている.特定の用語の意味を知るのに便利である.
 索引 本書に用いられている重要な用語は第3巻の巻末で説明している.読者は単語と掲示された頁数によって本書中での単語の出現箇所を簡単に知ることができる.


●訳者あとがき ――――――――――――――――――――

 あらためてこの本の特長を挙げてみよう.第一に音楽療法士の養成教育に必要な幅広い基本情報を含んでいるということがある.一つの領域に偏らず音楽療法の世界を広く俯瞰し平等に述べている.内容的には,本書の序章に述べられているように,まず音楽療法自体について記述され,その歴史,音楽と人間についてといった音楽療法士が身につけていなくてはならない基本的知識が1―3章に盛り込まれている.次に音楽療法の対象者の章が続くのであるが,第1巻においては,知的な障がいをもつ児童成人の領域(4章),そして自閉症スペクトラム領域(5章)が詳細に説明されている.

 このような幅の広さと奥深い内容をもつ音楽療法関連の書は世界にも数少ないので,当然ながら本書はアメリカをはじめとして世界の音楽療法士養成校での中心的な教科書として使用され続けている.日本においてもさまざまな大学や専門学校において教科書として用いられていて,日本音楽療法学会が毎年行っている音楽療法士(補)試験における信頼のおける受験参考書として評価されている.

 この本の三度の改訂に伴い,翻訳作業も三回めである.類似した内容の本をくり返し翻訳するのであるから通常は回をおって作業が容易になるはずである.しかし今回の作業は今までで最も困難であった印象がある.第一の理由はページ数の増加である.第2版の原著のボリュームは370頁であったが,第3版は最終頁が573頁で終わっている.以前の本の1.5倍以上の量に膨らんでいるのである.また,章によっては内容が大きく書き換えられており,新しく加えられた章もあるために時間のかかる作業となった.第二の理由は翻訳者である私の健康上の理由により長時間にわたる翻訳作業が困難となったことである.翻訳という作業は骨が折れる.原文に忠実であろうとすれば日本語が怪しくなる.日本語を直すと原文の意味から離れてしまう.読みやすく原意に忠実な文章を考えるのは苦しい作業でありながら,また創造的な能力を要求される活動でもある.

 本書は原著が著された2008年までの情報により書かれている.障がいの診断基準はDSM―IV―TRが使用されている.この診断基準は2013年に新しくなり現在はDSM―5の基準が広がりつつある.その点を考慮し,4章,5章の最後に新しくなった診断基準の変更点を簡略にまとめておいた.

 最後に私見を述べたい.我が国の音楽療法活動にこれから必要になる領域は「理論」である.現在の音楽療法活動の大多数は活動の背景に研究活動において確認された理論が存在していないのが実情ではないか.他領域の専門家たちからの質問,たとえば「音楽療法と音楽教育との違いと共通点は何ですか?」「認知症高齢者の人たちに古い流行歌の歌唱活動を行っている理由は?」などに対し,正面から真摯に答えて彼らに納得してもらう必要性が非常に高まっているのである.

 実践的な理論は二つの領域が成熟することにより生まれてくる.一つは内容のある質の高い臨床活動である.そしてもう一つは実践活動の意味を模索する臨床家による研究活動の普及である.仮説検証型の調査活動が組織的に長期間にわたり行われることにより,いままで見えてこなかった音楽活動の現象が浮き上がってくるであろう.本書の最終章にはこれらの研究活動に必要なさまざまな知識が述べられている.できるだけ早い時点ですべての翻訳作業が終了できるように,これからは複数の翻訳者による作業が行われることになる.

 この作業を支えてくれた人たちに感謝の意を表したい.妻悦子は私の健康を気遣いながらも励ましてくれた.長女綾は二人の幼子を育てながら医師として勤務している.忙しい中でも私の健康状態を常に把握し私の心強い相談役としての役割もはたしてくれた.先月には長男純の初めての子どもがうまれた.これらの家族のパワーがなければ私の作業は終えることはできなかったであろう.そして,一麦出版社の西村勝佳氏のいつもながらの温かい励ましに感謝したい.




2015年4月8日 栗林文雄

商品詳細

発売日 2015/4/17
サイズ A5
ページ数 216
ISBN 9784863250789
楽器 書籍