最初に思いついたのは、子供の頃に聞いたウクライナの民謡≪バンドゥーラを手にすれば(Взяв би я бандуру)≫ を曲のベースにすることでした。 バンドゥーラはウクライナの代表的な撥弦楽器であるので、短めの「導入部」の後の主旋律は、左手の小さなピチカートで伴奏されます。続く民俗舞踊的な性格を持つ「第1変奏」では、演奏者の笑いを誘うような要素も盛り込まれています。「第2変奏」では、W.エルンストの≪「夏の名残のばら」による変奏曲≫の第2変奏のようなアルペジオで始まった後、主題から離れて、政治的、人道的な状況に対する私の感情をもう少し深く掘り下げています。そこでは、≪怒りの日≫の意味深な引用やバッハのシャコンヌが聞こえてきます。ウクライナの人々が悲惨な事件の後に鎮魂歌として使った≪ティッサに浮かぶアヒル(Пливе Кача По Тисинi)≫という歌に深く感動し、第2変奏に続く楽章では、これも引用することにしました。