“なんとなく”演奏を脱却!プロギタリスト推奨 ギター奏法意識変革トレーニング 第4回「指が引っ掛かって地味に難しい? スライド & グリッサンドをマスターして、指板上を縦横無尽に滑り回ろう!」【produced by Go! Go! GUITAR】

 

基本テクニックはひととおり覚えて人並みにギターの演奏はできる、と思っているそこのアナタ!
本当に弾けていますか? なんとなく弾ける“つもり”になっていませんか??
コツコツ練習しなければいけないのは速弾きやハイテクプレイばかりではありません! 基本的なテクニックこそ、実は日々の積み重ねや意識が大切なのです!!
ここではプロだから教えられる、演奏テクニックに本当に大切な意識と練習を伝授します!

解説・模範演奏/生本直毅


この記事で学べること

スライドとグリッサンドの違いとは?

スライド&グリッサンドの基本

実践! スライド&グリッサンド練習フレーズ

 

 

■ スライドとグリッサンドの違いとは?

 

 「ガガガガガッ!! 痛っ!!」ギターを始めたばかりの頃、リードフレーズの練習でスライドしたときに指がフレットに引っ掛かって痛い目にあったギタリストは多いはず。さらに誰もが、指が目的のフレットまで届かなかったり行き過ぎたりして音程を外してしまうことを数え切れないほど経験してきたことでしょう!
 そんな苦い思い出はさておき、スライドというテクニックは本当によく使うし、特にリードフレーズを弾くときに使わないことはほぼないのではないでしょうか?
 ギターでフレーズを弾くときに音を滑らかに繋いで歌うようにフレーズを奏でてくれるのが、今回取り上げるスライドやグリッサンドなんです!

 まず、スライドとグリッサンドの定義についてお話ししましょう。諸説ありますが、ここでは長年筆者がギターを弾いてきて感覚的に身につけたことに基づいて簡単に説明します。

「スライド」
 スタート地点と目的地点が決まっていて、押弦したまま指を移動させること。
 2音を滑らかに繋ぐこと。

「グリッサンド」
 音程を滑らかに上下させる装飾音符的なこと。例えば、出したい音程に対して少し下からシャクったり、フレーズの語尾で音程をフォールさせたりすること。
 これも押弦したまま指を移動させるが、あくまでも装飾なのでスタート地点や終わり地点は曖昧。

 ちょっと難しい言い回しになってしまいましたが、あまり気にせず…! とにかく、滑らかに音程を繋いだり上げ下げしたりすることで、ギターとしてより豊かな表現ができるのです!

 とってもシンプルなメロディーをスライドやグリッサンドを使うか使わないかて弾き比べると、ギターの表現力の違いがとってもわかります。スライドやグリッサンドを使わないとつたない初心者みたいな表現にしかならないものが、使うといきなり上級者のような歌い回しになるのです!

 ただ…そんなスライドに、苦手意識を持っていませんか?

 そう、この横移動、実は結構外しやすいんです! 残念ながら、プロでもたまには外します。例えば、5フレット分以上離れたスライドなんかは特に難易度が高いと言えます。

 そんなスライドだって、やり方のコツを掴めば成功率がグッと上がるんです! 今までは成功率20%だったとしても、この解説を見て練習フレーズに取り組んでくれたら成功率80%は超えていけるようになるでしょう!

 それでは解説に行きましょう。

 

■ スライド&グリッサンドの基本

 

 まずは、スライドについて説明しましょう。これができるようになればおのずとグリッサンドも自由にできるようになると思います!

 スライドをするときに気をつけるポイントは以下です。

①指はしっかり立てて、指先で押弦すること

②横移動するとき、親指は一瞬離して左手の摩擦を減らす。(握ったままだと摩擦で横移動しにくい。)

③力まない

④ビビらず思い切ってスライドさせる。(ビビりながらだとうまく行きません)


 まず①から。これは、今まで取り上げたテーマでもほぼ毎回ポイントに挙げていると思います。つまり、これはギターにおける基本中の基本と言えるでしょう。指が立っていなくて寝た状態でスライドすると、指の腹がフレットに引っ掛かって冒頭に書いたような悲劇が起こります。ただし、和音を押さえたままスライドするときは、止むを得ず指が寝てしまう場合もありますので臨機応変に。

 

スライド & グリッサンドをマスターして、指板上を縦横無尽に滑り回ろう!(1)

▲OK。指を立てた状態で弦を押さえるとスムーズに移動できる。

 

スライド & グリッサンドをマスターして、指板上を縦横無尽に滑り回ろう!(2)

▲NG。指が寝た状態でフレットに指が引っ掛かりやすくなる。


 次の②は、最も見落としがち & 気付きにくいポイントです。実はここがスライドがスムーズにできるようになる最重要ポイントだと思っています。ネックを握っている左手の親指は基本常にネックに触れていると思いますが、スライドのときは、

(1)まず弦をピッキングして音を鳴らす

 

スライド & グリッサンドをマスターして、指板上を縦横無尽に滑り回ろう!(3)

 

(2)親指を離す

 

スライド & グリッサンドをマスターして、指板上を縦横無尽に滑り回ろう!(4)

 

(3)親指は離したまま目的地点まで横移動

 

スライド & グリッサンドをマスターして、指板上を縦横無尽に滑り回ろう!(5)

 

(4)親指でネックを握りこむ(触れる)

 

スライド & グリッサンドをマスターして、指板上を縦横無尽に滑り回ろう!(6)


 これを行なうことで不要な摩擦をなくしスムーズな横移動が可能になります!

 ③は、①や②と繋がっています。①のように指先を立てないと力まずに押弦できません。②ができていないと摩擦が強い中で左手を横移動させるので不必要に力を入れることになります。これでは失敗する要素だらけになってしましますね!

 そして、不思議なのが④。自信なさげにスライドすると、何故かミスります。慎重になりすぎて、目的地点の1フレット手前で指が止まって、「半音ずれてしまった〜!」みたいなことが起こります。逆に、思いっ切りスライドさせれば1フレット分はみ出しちゃって慌てて戻したみたいなことが起きても不思議とミスに聴こえないものなんです。その人のメンタルが音として表われてしまうので気をつけましょう!

 グリッサンドに必要なテクニックも基本的にはスライドと同じです。目立たせたい音のときに装飾的に使うとより効果的だと思います。例えば、目立たせたい音を1〜2フレット下からシャクらせたり、フレーズの最後の音はフレーズの最後をネック側に滑らせてフォールさせたり…。グリッサンドによって、ワイルドさ、繊細さ、緊張感、色っぽさ...などなど、いろいろな表現ができるようになりますよ。ぜひ試してみてください!

 

■ 実践! スライド&グリッサンド練習フレーズ

 

 ここからはスライドとグリッサンドのテクニックを磨くための実践的な練習フレーズにチャレンジしてみましょう。

・EX-1

 まずはよく使うペンタトニックスケールでの練習。人差指、中指、薬指をまんべんなく使ってまずは成功率100%目指してやってみよう。歌心を忘れずに!

 

スライド & グリッサンドをマスターして、指板上を縦横無尽に滑り回ろう!(7)

 

 

・EX-2

 スライドで上下を繰り返す練習フレーズ。スライド幅も広いので、ゆっくり確実に弾けるテンポからやってみましょう。

 

スライド & グリッサンドをマスターして、指板上を縦横無尽に滑り回ろう!(8)

 

 

・EX-3

 意外と難しいのがオクターブ奏法での横移動です。ハイポジションになるとフレットの幅も狭くなるので、ずっと使っている人差指と小指の間隔は調整しながらやってみましょう。じゃないと、2本の指のどちらかが押さえるフレットをはみ出してしまい音程を外したオクターブ奏法になってしまいます。

 

スライド & グリッサンドをマスターして、指板上を縦横無尽に滑り回ろう!(9)

 

 

・EX-4

 こちらはグリッサンドを大いに取り込んだフレーズ。このフレーズはワイルドに弾いてみましょう!

 

スライド & グリッサンドをマスターして、指板上を縦横無尽に滑り回ろう!(10)

 

 

【まとめ】

 
スライドの基礎練習みたいなことをやる機会はとっても少ないと思います。故に、スライドの成功率はいつまで経ってもあまり上がらないという方、多くないですか? 今回説明したポイントと、スライド成功率向上のための基礎練習フレーズを使って、指板上を縦横無尽に駆け回ってください。そうすれば、またしてもあなたのギターの表現力がアップすること間違いなし。ぜひ頑張ってみてくださいね!

【著者プロフィール】

ビブラートをマスターして、ギターで表現豊かに歌おう!(7)

 

生本直毅(いくもと・なおき)

ギタリスト、作編曲家

高校卒業後、ヤマハ音楽院に入学し、ギターと音楽制作を学ぶ。ヤマハ音楽院卒業後、ギタリストの西川進氏のアシスタントとしてプロの現場を学んだのち、プロギタリストとして様々なアーティストのライブやレコーディングでサポート活動を始める現在に至る。
また、アレンジャー活動やアーティストへのギターレッスン、ギター雑誌への執筆など幅広く行っており、2014年にはギター教則本も出版。

X(旧Twitter):@Naoki_Ikumoto

 

■著書

プロ・ギタリストの技術と知識と思考法がわかる本 CD付

プロ・ギタリストの技術と知識と思考法がわかる本 CD付
発行:シンコーミュージックエンタテイメント