虎は千里を行って――被災地をつなぐ民俗芸能・阪神虎舞(兵庫県神戸市)【それでも祭りは続く】

虎は千里を行って――被災地をつなぐ民俗芸能・阪神虎舞(兵庫県神戸市)【それでも祭りは続く】

日本には数え切れないほど多くの祭り、民俗芸能が存在する。しかし、さまざまな要因から、その存続がいま危ぶまれている。生活様式の変化、少子高齢化、娯楽の多様化、近年ではコロナ禍も祭りの継承に大きな打撃を与えた。不可逆ともいえるこの衰退の流れの中で、ある祭りは歴史に幕を下ろし、ある祭りは継続の道を模索し、またある祭りはこの機に数十年ぶりの復活を遂げた。
なぜ人々はそれでも祭りを必要とするのか。祭りのある場に出向き、土地の歴史を紐解き、地域の人々の声に耳を傾けることで、祭りの意味を明らかにしたいと思った。

東北から関西に移植された民俗芸能

   東日本大震災を機に、東北から遠く兵庫県神戸市にわたった民俗芸能があると聞いて興味を持った。その名は2018(平成30)年に結成された「阪神虎舞」。岩手県三陸沿岸地方に伝わる民俗芸能「虎舞」を、コンテンポラリーダンサーら有志が地元団体の指導のもと習得し、神戸市の新長田地区を拠点にさまざまな場で披露しているというのである。なぜ岩手の芸能が神戸市で? なぜダンサーが担い手に? いくつかのクエスチョンが頭に浮かぶ。その理由を知りたいと思い、神戸市へと向かった。

海の彼方から「虎」がやってきた

   東京から夜行バスに乗り、およそ10時間。神戸三宮駅に到着した頃には、すっかりと夜が明け、駅前では通勤通学の人々がせわしなく往来する、東京と変わらない風景が広がっていた。神戸には十数年近く前に来たことがあるような記憶もあるが、個人的にはなじみの薄い場所だ。目当ての電車がわからず、5分ほど改札の前で右往左往したのち、ようやくそれらしい電車を見つけて乗りこんだ。

   ここで、虎舞について少し予習をしておきたい。獅子舞は聞いたことがあるが、虎舞は「?」という人も多いのではないだろうか。虎舞の伝承地の一つである岩手県山田町の郷土誌『山田町史 上巻』では、次のように説明されている。

”虎舞は風流獅子踊り系の一種といわれ虎頭から下がる布胴に二人の人が入って激しく踊る。(中略)大太鼓、小太鼓、笛、てん平金<ママ>の囃子に、若者連中の掛け声が入り威勢のいい踊りがくり広げられる。”

(山田町教育委員会 編『山田町史 上巻』)

三陸沿岸地域における虎舞の発祥とも言われる、岩手県山田町の大沢虎舞(2015) 提供:橋本裕之

   実は虎舞は全国各地に分布しており、1992年に刊行された佐藤敏彦  編著『全国虎舞考』によると、北は青森から、南は鹿児島まで継承団体が存在するという(刊行当時)。多少の例外はあるが、多くは太平洋沿岸地域に分布しているというのが大きな特徴で、虎舞が海に関係する芸能であろうということが想像できる。

   また、三陸沿岸地域に伝わる虎舞には二系統が存在すると言われている。Webサイトの「いわての文化情報大辞典」(岩手県文化スポーツ部文化振興課 文化芸術担当)によると、岩手県県南部(釜石市以南)や宮城県など、旧仙台藩域に分布する虎舞は獅子舞が変化したものであると考えられており、悪魔祓いや火伏せを意図している場合が多いという。確かに、私が以前鑑賞したことのある岩手県大船渡市末崎町の門中組虎舞は、虎というよりは「獅子」の顔つきをしていた。

獅子舞から虎舞に変化したものとされる、岩手県大船渡市末崎町の門中組虎舞(2017)

   ちなみに今回、取材する阪神虎舞は、岩手県大槌町の大槌城山虎舞から指導を受けている団体で、釜石市以北、旧盛岡藩域に伝わる系統の虎舞となる。

大槌城山虎舞。毎年9月に開催される「大槌まつり」や、「三陸大槌町郷土芸能 かがり火の舞」といったイベントで披露される
提供:大槌町観光交流協会

   このように二系統の虎舞が三陸沿岸地域に伝わるわけだが、ルーツは違っても、海への信仰という点で両者は共通している。例えば、門中組虎舞の獅子頭には、虎舞と海を結びつける伝承がある。『大船渡市史 第4巻 (民俗編)』によれば、鎌倉時代、末崎町の泊里浜に、神輿・祭器・仏体などを載せた船が漂着した。村人たちははじめこれをいぶかしんだが、村に祭ることにした。数々の宝物の中には獅子頭もあった。これをもって獅子舞を奉納すれば、「悪魔退散・五穀豊饒・大漁」の霊験あらたかなるものありということで、「虎舞い」として今日まで受け継がれるようになったという。

   また三陸沿岸地域の虎舞には、漁師が無事に帰ることを祈願する「航海安全」の信仰を持つものが多い。これは「虎は一日にして千里行って、千里帰る」という故事にちなんでいる。

   いずれにしても、虎舞と海とは切っても切れない縁であるということがおわかりいただけるだろう。国文学者の佐藤 彰は論考「「虎舞」系譜考――静岡県南伊豆町小稲の事例をめぐって」の中で、万葉集の長歌の一節「居り居りて 物にい行くとは 韓国(からくに)の 虎といふ神を 生け捕りに……」を引き合いに、虎という生き物が古代から日本で畏怖の対象とされてきたことを指摘している。

   海は魚などの恵みを与えてくれるとともに、ときには大きな災いをもたらす存在でもある。そんな海に対する畏敬が、虎の聖なるイメージと結びつき、虎舞が生まれたのだろうか。日本各地の沿岸地域には、海上からやってきたものを神として祭る「寄り神」伝承が数多く残っている。海に向こうから来たる「寄り神」としての虎、そして虎舞。虎舞に関する資料を読んでいると、そんな豊かなイメージが頭の中に浮かび上がってくる。

おだやかな虎のたたずまいから漂う神聖さ

   東海道本線のJR西宮駅からバスに揺られること10分。たどり着いたのは、西宮市大社町の廣田(ひろた)神社だ。阪神虎舞は、結成からほぼ毎年、この廣田神社の春祭で奉納の演舞を行なっているという。関西圏の人なら、廣田神社の名前にピンとくる人も多いかもしれない。

廣田神社の拝殿

   廣田神社は「日本書紀」にもその創建の由来が記されている由緒正しき神社であるという。その一方、毎年、阪神タイガースの球団関係者が必勝祈願に訪れる、いわばタイガースファンの聖地としても有名だ。

   春祭りは10時からスタートした。神社の拝殿に椅子が並べられ、氏子総代、阪神虎舞メンバー、一般参列者の中に混じって、見学をさせていただくことにする。いわゆる「お祭り」的なにぎやかな雰囲気ではなく、あくまで氏子を中心に少人数で執り行われる厳かな神事のようである。

巫女による舞い

   祝詞(のりと)奏上や神楽の奉納が行われた後、いよいよ阪神虎舞の神前奉納が始まった。虎柄の布をまとった2人の女性が神前へと進み出る。

虎が登場

   予想をいい意味で裏切られたというか。「虎舞」という言葉の響きから、何か獰猛な獣の動きをイメージしていたのだが、虎のたたずまいはいたっておだやかで、神様を前に何か思うことでもあるような、慎重な足取りで拝殿の中を動き回る。

あたりを見まわす虎

   時折、チーンという涼やかな音が静寂の中に響き、(後から聞いたら手平鉦を打って音を出していたようだ)より神聖な雰囲気をかもしだす。

寝そべる虎

   最後に虎は本殿の前で前足を大きく広げて、ゆうゆうと寝そべった。神様に平伏している様なのか、あるいはネコ科動物の気まぐれな習性なのか。参列者たる人間らがかしこまって見守るなか、大胆に悠然と振る舞う虎の様子は、人ならぬ存在であることを見る者に誇示しているかのようだった。

荒ぶる2頭の虎の舞い

   春祭の行事が終わると、引き続き、拝殿前の参道で奉納演舞が行われた。見物人がどこからともなく集まってくる。準備が整うと、スピーカーからお囃子が流れはじめ、その音に誘われるように、2頭の虎が姿を現した。先程の従順さは影を潜め、本来の猛虎たる姿を取り戻したかのような、荒々しい動きを見せる。

階段を降りてくる2頭の虎

   本物の虎を見たことのない自分にとって、この日に見た虎舞の動きは、本物以上に本物らしいと思えるものだったかもしれない。動物的な衝動に突き動かされるように虎たちは、飛び上がり、立ち止まり、寝そべり、観客を威嚇し、さまざまに躍動。「遊び虎」という演目では、虎が前足で顔をぬぐったり、2頭でじゃれあったりと、かわいらしい一面を見せてくれる。

じゃれあう虎

   クライマックスとなる「笹ばみ」では、その名の通り2頭の虎が興奮した様子で笹に食らいつく。後で確認したところ、この演目は、虎が笹で牙を磨き、爪を研ぐ様を表現しているということだ。これから獲物でも捕らえるつもりなのだろうか。虎は昂りを抑えられないという様子で、激しく四肢を動かす。その獰猛な顔つきもあいまって、子どもだったら泣き出してしまうのではないだろうかと思うくらい、覇気のある演舞だった。

笹ばみの様子

   虎舞の余韻に浸りながらも、演舞の休憩時間に、阪神虎舞と書かれた法被を羽織った一人の男性が話していたことが頭の中に引っかかっていた。

「虎というのは“千里行って千里帰ってくる”という伝承がありまして、漁師さんの航海安全、そういうことを祈って、岩手県の沿岸地方で非常に盛んに行われている芸能です。主にお祝いの席で演じられることが多いのですが、東日本大震災の直後も、地域を元気づける芸能としてすごく行われました。ただ震災からずいぶんと時間が経って、特に我々のような遠方にいますと、東日本大震災の被災地が今どうなっているのか、ほとんどの方はご存知ないと思うんですね。だんだん記憶というのは風化していきます。そうしたときに、何とかその記憶の風化に抵抗したいというので、少しでも皆さんに覚えていていただきたいというふうなことを考えまして、こういう団体を立ち上げたわけです」

   遠隔地で震災の記憶をつなぐ、記録媒体としての芸能。なぜそのようなことを思いつき、実行に移したのか。決して容易なことではないように思われる。参道での演舞が終わった後、阪神虎舞のブレインとも思しきその男性に話を聞いてみた。

民俗芸能があって地域社会がある

   男性の名前は橋本裕之さん。阪神虎舞の結成を企てた創設者の一人であり、結成後は“世話人”として阪神虎舞の活動を傍から支え続けているという。

阪神虎舞 世話人 橋本裕之さん

「僕の根っこは河内音頭と吉本新喜劇なんです」
   そう話すように、橋本さんの出身地は大阪だ。しかも、本職は演劇学・民俗学を専門とされる研究者で、現在も大阪に住まわれながら、大阪公立大学 客員研究員、國學院大學 客員教授を務めておられる。また、大阪市にある坐摩(いかすり/ざま)神社の権禰宜(ごんねぎ)でもある。そんな方が、なぜ岩手県の芸能に関わることになったのか。「2010(平成22)年から数年間、岩手県の盛岡大学で教鞭を執りながら、県の文化財保護審議会委員を務めていたんですよ」と、橋本さんは種明かしをしてくれる。文化財保護審議会とは、地域における文化財の適切な保護や活用について審議する組織のことである。審議会委員として、橋本さんは岩手県下閉伊郡普代村(しもへいぐんふだいむら)の「鵜鳥(うのとり)神楽」を、県指定無形民俗文化財にするために大きな力を果たした。

岩手県下閉伊郡普代村の「鵜鳥神楽」(2024)

「鵜鳥神楽って研究者の中ではめちゃくちゃ有名な民俗芸能なんですよね。地域を巡行しながら演じる神楽って、日本でも鵜鳥神楽と、宮古市の黒森神楽しかないですから。でも聞いたら、村指定にしかなってないというので、それはけしからんと、県指定にするためのお手伝いをすることにしたんです」

   無事に鵜鳥神楽が県指定されるということになった矢先、橋本さんは、その後の運命を左右する、そして阪神虎舞の結成にも関わってくる未曾有の事態に直面することになった。2011(平成23)年3月11日に発生した、東日本大震災だ。

震災2日目の被災状況。撮影地不明(2011) 出典:Yahoo! JAPAN 東日本大震災 写真保存プロジェクト

   震災は多くの尊い命を奪っただけではなく、地域の民俗芸能にも大きな打撃を与えた。その被災事例は枚挙に暇がないが、参考までに被災地域の民俗芸能に関する情報をまとめたウェブサイト「311復興支援 無形文化遺産情報ネットワーク」(東京文化財研究所)のデータベースを見ると、例えば岩手県宮古市津軽石の法ノ脇鹿子踊(のりのわきししおどり)は「地区の大半が流失し、道具や衣装も全て流失」、宮城県東松島市大曲浜(おおまがりはま)の大曲浜獅子舞は「関係犠牲者数名。道具類はすべて流出」、福島県南相馬市原町区の北萱浜(かいばま)の神楽は「関係者数名が県外避難しており、また用具はすべて流失し、稲荷神社も一部倒壊」となっている(データベースは2014年3月に情報収集終了)。

   長らく民俗芸能の研究に携わってきた人間としてこのような状況にいても立ってもいられず、橋本さんは行動を開始。日本財団やナショナル・トラストなど各種の団体からの支援を仲介する中間支援を通して、被災した各地の郷土芸能の支援する活動をはじめた。「震災を通じて、もう本当に膨大な団体とお付き合いをすることになりました。100じゃきかないくらい」という言葉からも、橋本さんが震災後、どれだけ多くの団体を支援してきたかがうかがい知れる。

支援活動の中で秋葉権現川原獅子舞に参加する橋本さん(左) 提供:橋本裕之

   ところで、多くの団体が活動停止に追いやられる中、早期に活動を再開した民俗芸能団体もあった。例えば、宮城県石巻市雄勝町(おがつちょう)の雄勝法印(おがつほういん)神楽は、犠牲者数名、道具類流出の被害を出しながらも、2011(平成23)年5月には活動を再開している。なぜかような過酷な状況から、被災地の人々は芸能を再開しようと考えたのだろうか。そのヒントになるような言葉を、橋本さんは支援活動で関わった岩手県釜石市の尾崎町虎舞の岩間さんという若者から聞いている。そのエピソードを、橋本さんの著書から引用してみよう。

”彼は「釜石に住んでいるから虎舞をやっているのではない。虎舞をやっているから釜石に住んでいるのだ。虎舞がなくなったら釜石にはもう住まなくなる」というようなことを話してくださったのである。私は意表を突かれて、その力強い言葉に狼狽した。私たちはどうしても地域社会が存在するから祭りや芸能が演じられると考えてしまいがちである。だが、岩間さんは祭りや芸能が演じられるから地域社会が存在するといっていた。私は祭りや芸能が地域社会を維持する紐帯としてのみならず、地域社会を再生させる原動力としても働く可能性を秘めているということを思い知らされたのである。”

(橋本裕之 著『震災と芸能 地域再生の原動力』より)

釜石市「釜石まつり」(2012) 出典:Yahoo! JAPAN 東日本大震災 写真保存プロジェクト

   地域があるから祭りや芸能があるのではなく、祭りや芸能があるから地域があるのだ。ときとして祭りや芸能がそのように希求されるものであるという事実は、私にとっても衝撃的であった。

記憶の風化に抵抗する被災地支援の新しい在り方

   橋本さんは被災地支援活動の一環として、2012(平成24)年より大阪公立大学教授の中川 眞さんの助力を得ながら、被災地の民俗芸能団体を関西に呼んで公演の場を提供するという取り組みを始めた。この企画は毎年の恒例行事となったが、月日が経つとだんだんと支援の在り方も変更を余儀なくされていった。その理由を、橋本さんは次のように説明する。

2011年の鵜鳥神楽大阪公演の模様 提供:DANCE BOX

「震災から10年近く経つと、被災地の民俗芸能支援のための助成金も少なくなってきます。資金調達が難しくなるにつれ、東北から関西に芸能団体を呼ぶこともできなくなってきました。次に何をやろうかと中川さんと話したときに、最初はほんの与太話だったんですけど、関西で東北の民俗芸能団体を作ったら面白いですね、というアイデアが生まれたんです」

   震災の記憶が薄れていくなか、関西を拠点に活動する被災地域由来の民俗芸能団体がいれば、遠隔地から東北の地に思いを馳せる機会も増えるだろうという発想だ。ここに、現在まで続く阪神虎舞のコンセプト「震災の記憶の風化に抗う」が生まれた。徳島県の阿波踊りが東京の高円寺へ、青森県のねぶた祭が長崎県の五島列島へ、という事例はあったが、地域おこしではなく、震災復興という文脈で民俗芸能が「移植」された例はかつてない。そこに可能性を感じた橋本さんと中川さんは、移植する芸能の選定と、その担い手となるメンバーや、活動の拠点探しに乗り出した。それでは、なぜ移植した芸能が「虎舞」だったのか。

「まず関西人は虎が好き、だから虎舞しかないだろうと。(そして、どの団体に協力を仰ぐかとなった時に)虎舞は三陸沿岸に数多くあるんですけど、なかでも支援活動を通じて出会った大槌町の大槌城山虎舞はパフォーマンスが圧倒的でした。本来、虎舞の技術は門外不出だったんですけど、震災後、私が大槌城山虎舞の支援に関わらせていただいたという縁もあり、虎舞の移植に協力していただけることになりました」

廣田神社での大槌城山虎舞の公演(2017) 提供:橋本裕之

   大槌城山虎舞は1996(平成8)年結成の、民俗芸能団体としては「新興」ともいえる組織だった。しかし、震災で用具を流出しながらもいち早く体勢を立て直し、避難所で虎舞を披露するなど、震災直後から復興のトップランナーとして精力的に活動を行った。本来虎舞にはなかった鎮魂や慰霊のニュアンスを印象付けた団体として、阪神虎舞のコンセプトにもふさわしい団体だった。

   関西での活動拠点探しは難航したが、最終的には神戸市の長田に劇場を持つ、NPO法人DANCE BOXの協力を得られることになった。2018(平成30)年6月、大槌城山虎舞のメンバーを現地から呼んで、2日がかりの虎舞ワークショップ「Challenge虎舞!」をDANCE BOXの劇場で実施。同年、ワークショップに参加した有志メンバーを中心に「阪神虎舞」が結成された。

当時制作されたワークショップのフライヤー

   神戸の地に岩手の民俗芸能を行う団体が誕生したのは、「被災地の民俗芸能を現地から持ってくれば、震災の記憶の風化に抵抗できるのではないか」という壮大な仮説にもとづくものだった。しかし、一言に「民俗芸能を移植する」といっても、そう簡単に実現できることではないだろうと、素人ながらに想像できる。

   活動の拠点になることを引き受けた劇場、そして実際に虎舞を演じるパフォーマーたち、それぞれどのような思いから虎舞に関わったのだろうか。芸能の種子が根を下ろした人と土地についてさらに理解を深めたいという思いもあり、翌日、阪神虎舞が拠点としている神戸市長田区を訪れることにした。(つづく)


Text:小野和哉

プロフィール

小野和哉

小野和哉

東京在住のライター/編集者。千葉県船橋市出身。2012年に佃島の盆踊りに参加して衝撃を受け、盆踊りにハマる。盆踊りをはじめ、祭り、郷土芸能、民謡、民俗学、地域などに興味があります。共著に『今日も盆踊り』(タバブックス)。
連絡先:kazuono85@gmail.com
X:hhttps://x.com/koi_dou
https://note.com/kazuono

本連載の一覧を見る →


この記事を読んだ人におすすめの商品